省エネ法の対策に自家消費型太陽光発電?環境省の補助金も

省エネ法の取り組み方について、ご思案されている方もいらっしゃるかと思います。

このコラムでは、省エネ法に関する基礎的な知識や「改正省エネ法」の主なポイントを中心にご説明します。

改正省エネ法で取り組むべき具体的なアクションとして自家消費型太陽光発電の導入や環境省の補助金なども併せてご紹介します。

そもそも省エネ法とは?

省エネ法太陽光発電

省エネ法とは正式名称を「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」といい、工場や建築物、郵送、機械・器具について省エネ機器の導入や太陽光発電を設置するなどして省エネ化を進め、効率的に使用するための法律です。

省エネ法はオイルショックを契機として制定された法律で、施行されたのは昭和54年と今から40年以上も前に制定され、今なお施行されています。

省エネ法で発生する義務や罰則

省エネ法は、工場・事業場および運輸分野を対象とした規制が定められています。
省エネ法が課す義務のひとつに、エネルギー使用量の把握および「エネルギー使用状況届出書」の提出、があります。

また、工場・事業場のエネルギー使用量の総量が1,500kL以上の場合には、毎年度の5月末日までに「エネルギー使用状況届出書」を作成し、本社所在地を管轄している経済産業局への提出といった義務も課されます。

その他にも、一定の条件を満たし、「特定事業者」や「特定連鎖化事業者」として指定された事業者に関しては、

  • 定期報告書・中長期計画書の提出
  • エネルギー管理統括者・エネルギー管理企画推進者の選任
  • エネルギー管理者またはエネルギー管理員の選任

などの義務も発生します。
これらの義務で定められた届出や報告を怠ったり、虚偽の届出をしたりした場合、「50万円以下の罰金」などが課せられるため注意が必要です。

改正省エネ法で気にすべきポイント

改正省エネ法で気にすべきポイント

改正省エネ法とは?

省エネ法は、たびたび改正されているため、改正前の内容と比較して「改正省エネ法」と呼ばれたりもしています。

ですので、改正によって規則が追加されたり、変更されたりしていますので、いくつか重要なポイントをピックアップして解説しましょう。

省エネ法の改正で重要なポイントが、2009年の改正で「企業単位での規制」になったことです。

省エネ法の対象が、工場・事業者単位から企業単位になることを表した図
出典:経済産業省 資源エネルギー庁ウェブサイト 配布パンフレット「省エネ法の概要」より抜粋

2009年の改正前は「親会社・子会社」それぞれのエネルギー使用量が規制対象だったのに対し、改正後は「グループ企業全体」のエネルギー使用量が規制対象になりました。(上図 右側)
(以下「エネルギー使用量」は、原油換算値(kL)のことを指します)

例として、工場・ビル・店舗などが全国に分散している企業で考えてみるとよく分かります。

  • 事業場:1,000kL/年
  • 事業場:600kL/年
  • 営業所:200kL/年
  • 営業所:100kL/年

たとえば上記の場合、改正前の省エネ法であれば、「工場・事業場単位」のエネルギー使用量が規制対象でしたので、どの施設も1,500kL/年を超えていないため規制対象にはなりませんでした。

ところが省エネ法の改正によって「企業全体で1,500kL/年を超える場合」が規制対象となったため、上記の例で挙げた企業は、合計で1,900kL/年となり、規制の対象となります。

さらに2018年の改正により、これまでは規制対象外だった「ネット通販を営む小売り事業者」も、省エネ法の規制対象に含まれました。

これは、荷主が貨物輸送事業者等と連携して、受け取り場所の多様化や宅配ボックスの活用など貨物輸送における効率化の積極的な取り組みを期待するものです。

また、この他にも、過去の改正において、

  • 「電気需要平準化時間帯」の設定
  • 「工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針」の策定
  • 「電気需要平準化評価原単位」の策定
  • 「定期報告書様式」の変更といったポイントがあります。

これらについてもご紹介していきます。

「電気需要平準化時間帯」の設定

電気の需要平準化は、省エネ法の2013年の改正で、以前よりさらに重要視されるようになりました。

2013年の改正省エネ法において、電気需要平準化の推進策として新たに重要視されたのが「時間」の概念です。

従来の省エネは、朝方や昼間、夜間でまんべんなく同じ程度の省エネを求めていましたが、季節や時間帯ごとで電気の使用量は異なるため、それに合わせて省エネを推進していったほうが合理的である、という考え方です。

そんな中、改正によって新たに設定されたのが「電気需要平準化時間帯」です。
「電気需要平準化時間帯」とは、電気の需要と供給にあわせて、「電気の需要の平準化」を推進する必要がある時間帯のことを指します。

具体的には、全国一律で7~9月(夏期)と、12~3月(冬期)の8~22時が該当します。
日本全体で、空調の使用量が増える時期・時間ですね。

また、この「電気の需要の平準化」とは、昼間の消費電力を夜間に移すピークシフトや、使いすぎを抑えるピークカットなどにより“日本全体の夏期および冬期の昼間の電気需要を低減させる”ことを指します。

「工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針」の策定

2013年の改正では、上記でご紹介してきた「電気需要平準化時間帯」を推進するために、
「工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針」という、事業社が取り組むべき措置に関する指針も定められました。

具体的には、

  • 電気需要平準化時間帯(7~9月と12~3月の8~22時)において、
    電気の使用から、燃料または熱の使用への転換をする(チェンジ)
  • 電気需要平準化時間帯(7~9月と12~3月の8~22時)に使用している
    電化機器の使用時間帯を、電気需要平準化時間帯以外の時間帯へ変更する (シフト)
  • 「エネルギーの使用の合理化の徹底」や
    「電気の使用量の計測管理の徹底」など、事業社が取り組むべき措置を行う(カット)

が挙げられます。

「電気需要平準化評価原単位」を策定

同じく2013年の改正で、新たに「電気需要平準化評価原単位」が設けられました。

「電気需要平準化評価原単位」とは、電気需要平準化時間帯(7~9月と12~3月の8~22時)の電気使用量を、実際の電気使用量を1.3倍にして算出するものです。

つまり、電気需要平準化時間帯内での削減を実現した場合はより良い評価となり、逆に電気需要平準化時間帯内の使用電力が増えた場合には評価が低くなります。

これにより、それぞれの事業者の評価を公平にすることを図っています。

その結果として、電気需要平準化時間帯の電気消費を抑える狙いがあります。

「定期報告書様式」の変更

こうした2013年の改正により、「定期報告書様式」も変更されました。

2020年度提出用の定期報告書作成支援ツールは、
経済産業省「資源エネルギー庁」のWEBサイトにて公開される予定です。
参考:2020年度提出用はこちら

適合を建築確認の要件とする建築物の対象の拡大

2019年5月には「建築物省エネ法の改正概要と今後のスケジュール等
について
」が公布されました。
この交付によると現行では大規模(延べ面積2,000㎡以上)オフィスビルが規制対象ですが2021年5月までに中規模(延べ面積300㎡以上)のオフィスビルまで拡大される予定です。

改正省エネ法で取り組むべき具体的なアクション

改正省エネ法で取り組むべき具体的なアクション

このように、時代に合わせ、省エネ法の改正という形で、さまざまな規制や重点ポイントが定められ、日本全体で省エネを推進していこうとしています。

日本においては、工場などの企業活動によるエネルギー使用量が、全体の大部分を占めています。
そのため、企業が積極的に省エネ法を意識し、取り組んでいく必要があるのです。
それでは具体的に、企業が省エネ法にどのように取り組むべきかをご紹介していきます。

①自家消費型太陽光発電システム

自家消費型太陽光発電システムとは自社工場の屋根・屋上などに太陽光発電システムを設置して発電した電力をそのまま施設で消費する事で、電力会社から購入する電力量を抑える事ができる省エネ方法のひとつです。

自家消費型太陽光発電システムは電気料金の削減だけでなく、災害などの緊急事態が発生した際に企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るために日中のみ太陽光発電システムは電源として機能します。また太陽光発電の電力の自家消費により地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出量の削減に貢献し、CSR活動として内外にアピールが可能です。

節税面においても自家消費型太陽光発電なら中小企業等経営強化法に基づく税制優遇が利用可能となり、即時償却もしくは税額控除のいずれかが適用されます。

まとめ

省エネ法はたびたび改正が行われており、検索しても古い情報が出てきたり、最新の情報が分かりづらかったりすることも多いですが、しっかり押さえておきたいポイントは、これまで「工場・事業場単位」だったエネルギーの使用量が「企業単位」に変わったことです。

また、省エネを行う「時間帯」という概念が加わり、電気需要平準化時間帯(7~9月と12~3月の8~22時)にいかに省エネを行うかが重要視されるようになりました。

「省エネ法」の改正に対して企業がとるべきアクションとしては環境省の補助金を有効に活用して自家消費型太陽光発電システムを設置することなどが挙げられます。
とくに、自家消費型太陽光発電は環境施設として認められるため「省エネ法」にしっかり繋がる長期的な取り組みです。太陽光発電で発電した電気を使用することで「化石燃料由来の電力の購入を減らす」ことができ、省エネ法が推し進める「省エネ」を達成するだけでなく様々な税制も適用可能なため、多方面にメリットがある設備投資のひとつです。

時代にあわせて改正されていく「省エネ法」に対して、企業側もしっかりと対策を講じていきましょう。

利益を生まない「CSR活動」の重大な意味と自家消費型太陽光発電

利益を生まない「CSR活動」の重大な意味と、自家消費型太陽光発電について解説

自家消費型太陽光発電と聞くと、皆さんはどのようなイメージを持たれますか?
節電・節約の印象が強い方も、なかにはいるかもしれません。
「ちょっとした節電のために、巨額の設備投資なんて割に合わないのでは?」と考える方も少なくないと思います。

しかし、自家消費型太陽光発電の導入が、企業のイメージアップにつながるとすればどうでしょうか?

そもそも自家消費型太陽光発電とは?

電気を自社で発電して使うことを目的とした太陽光発電システム

自家消費型太陽光発電とは、工場やオフィス、店舗、倉庫などで使用する電気を自社で発電し、
利用することを目的としている太陽光発電システムを指します。

太陽光発電といえば、売電を目的とした「投資」のイメージを持つ方も多くいますが、
自家消費の場合はこれを行いません。

自家消費型太陽光発電のメリットとしては、まず電気代の削減に役立つこと。
近年は電気代の高騰が進んでおり、節電に力を入れている企業も少なくありません。

太陽光発電設備を導入し自社で電気を賄うことにより、
電力会社から購入する電気代の負担を減らすことができるのです。

すべての電力を補完できなくとも、
購入する電気量を軽減させることが可能なため、大幅な節約につながります。

万が一、電気代の高騰傾向が続いた場合にも、その影響を避けることができます。

「投資として役立たないのに、太陽光発電設備を導入したら損をするのではないか」
と考える方もいるかもしれませんが、上記のような節電・節約効果、電気代上昇リスクを回避することによって
間接的に利益アップにつながる可能性もあります。

ほかにも、火力発電と比較してCO2排出量が少ない電力のため環境に貢献できる、設備投資による節税対策として役立つなどのメリットが挙げられます。
そのため、CSR対策やESG投資対策の一環として、自家消費型太陽光発電を取り入れる企業も増えているのです。

企業イメージアップにつながる自家消費型太陽光発電

企業のイメージアップを図る意味を解説します

利益を生まない「CSR活動」の重大な意味

CSRとは、「corporate social responsibility(企業の社会的責任)の略称です。企業の事業活動は利益を生むために、環境や周囲の人々にさまざまな影響を与えます。つまり企業には、消費者や株主といったステークホルダー(利害関係者)以外に対しても、責任を持った行動が要求されているのです。
「利益を生まない活動に意味はない」と思われる方もいるかもしれませんが、CSR活動にはさまざまなメリットがあります。その最たるものが、企業評価の向上です。
CSR活動にはボランティアや植林といった環境保全活動以外にも、さまざまな方法があります。
たとえば、マイクロソフト社は2015年に自閉症の方をフルタイムで採用し、多様な人材確保に向けて動き出しています。

ほかにも、海外での地雷撤去サポートや発展途上国での保健医療支援といったさまざまな方法で、CSR活動を行う企業があります。

CSR活動は「企業の価値」を高める重要なアクション

こういった活動を通して生まれるのは、「利益」ではなく企業の「価値」。
つまり、イメージアップへつなげることができるのです。また、このような活動から新たなイノベーションが生まれ、
サービス向上や商品アイディアが誕生するケースもあります。
しかし、海外での大規模な活動ができるのはほんの一握りの企業といえるでしょう。一方で自家消費型太陽光発電の場合なら、経済産業省や自治体などの補助を受けながら「目に見えるCSR活動」として取り入れることが可能です。

「ESG投資」への対策

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の
頭文字を取った言葉です。
「ESG投資」とは、投資家が、その企業が環境や社会、経営面で長期的な視野を持って
活動しているかどうか、という観点で、投資に値するか否かを判断する傾向のことです。
たとえば、近年は洋服や雑貨などがリーズナブルな価格で手に入るようになりましたが、
その背景には“海外労働者の酷使”という闇が潜んでいることがあります。
ほかにも、資材コストを下げるために仕入れ価格が安い海外の木材を大量に購入し、
環境破壊を広げてしまうというパターンも。

こういった人権侵害や環境破壊などを行う企業を、
投資対象から除外していこうという考えがESG投資です。

参考リンク:経済産業省「ESG投資」

以前は環境や社会を意識した投資方法はリターンが低く、
リスクが大きいものと否定的な見方がされていましたが、
近年は「長期的な視野を持った経営が実施できる企業」として評価されています。
つまり、ESG対策を行うことで企業のイメージアップが期待できます。

 

活動に広がりを見せる「RE100」

RE100は「Renewable Energy100%」の略称で、
100%再生可能エネルギーを用いて事業運営を行うことを目標とした企業が
加盟するイニシアチブを指します。

2018年1月には144社が加盟しており、
今後は業界や国を超えて活動に広がりを見せる可能性があります。
たとえば、日本はリコーやソニー、積水ハウスなどまだ少数ですが、
海外企業では家具メーカー大手のIKEAやスポーツ用品で有名なNikeなどが参加しています。

参加条件は、「事業運営を100%再生可能エネルギーで行う宣言」をすること。
ほとんどの企業は達成年度を目標として掲げており、その実現を目指して努力しています。

(参考リンク:RE100(公式) )

ここで重要となるのが、自家消費型太陽光発電です。
太陽光発電は再生可能エネルギーのひとつで、
日本では固定価格買取制度により大幅な普及を遂げました。

オフィスや工場、倉庫などに発電設備を設置するだけでなく、
再生可能エネルギーで発電を行う電力会社から購入契約を結ぶといった方法でも可とされています。

自家消費型太陽光発電で企業価値アップを目指そう

「利益」を生まない活動は、一見すると「損」しかないように感じられますが、
実は企業にとって大切な価値を生み出しています。
自家消費型太陽光発電も、利益は生み出さないものの企業にとって有益な存在といえるでしょう。

企業のイメージアップとして、そしてCSR活動やESG投資対策の一環として
自家消費型太陽光発電を取り入れてみてはいかがでしょうか?

「低炭素化」から「脱炭素化」へ!脱炭素経営の実現に必要なこと

脱炭素経営

今、世界の流れが「低炭素化」から「脱炭素化」へ向かっていることをご存知ですか?
世界のトレンドに遅れないためにも、「脱炭素経営」に向けて何をすればよいのかを確認しておきましょう。

世界の流れは「低炭素化」から「脱炭素化」へ

世界の流れが「低炭素化」から「脱炭素化」へ向かい始めたきかっけは、2015年12月に開かれた気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で
採択された「パリ協定」です。
「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を産業革命前の1.5~2℃までに抑えることを目標にしており、
発展途上国も含めて190以上の国と地域が参加しています。
パリ協定に参加している国々には、温室効果ガスの削減に向けた「削減目標」を設定し、目標達成に向けて取り組むことが義務付けられています。

気温上昇を1.5~2℃までに抑えるのは「低炭素化」では不可能

これまでは温室効果ガスの排出量を削減する「低炭素化」が主流でしたが、
それでは「世界の平均気温の上昇を1.5~2℃までに抑える」という目標を達成できません。
そのため、世界的な流れとして、温室効果ガスの排出量ゼロを目指す「脱炭素化」に向かい始めたのです。

国ごとに異なる温室効果ガスの削減目標

「パリ協定」により提出が義務付けられている温室効果ガスの削減目標は、国ごとに異なります。
ここでは、日本やヨーロッパ(EU)、中国などの削減目標と達成に向けた具体的な動きを見ていきましょう。

中国の削減目標は60~65%

世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国である中国の削減目標は、

  • 2030年までにCO2排出量を減少に転じさせる。
    また、より早期にCO2排出量がピークを迎えて減少に転じるように、最大限の努力を行う。
  • 2030年までにGDP(国内総生産)あたりのCO2排出量を2005年対比「60~65%」削減する。
  • 2030年までに、一次エネルギー(自然由来のエネルギー)消費に占める
    再生可能エネルギーなどの非化石燃料エネルギーの割合を20%に増加させる。
  • 2030年までに、2005年と比較して、森林備蓄容量を約45億立方メートル増やす。

というものです。

(参考資料:日本経済新聞「中国、CO2削減目標提出 GDP当たり60~65%」)

こうした目標の達成のために、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの普及や深刻な大気汚染の解消などに向けた取り組みを行っています。

ヨーロッパ(EU)の削減目標は40%

ヨーロッパ(EU)の削減目標は、「2030年までに1990年と比べて、温室効果ガス排出量を国内で少なくとも40%削減する」
というものです。

アメリカは2017年にパリ協定を離脱

アメリカは、「2025年までに、2005年と比べて温室効果ガス排出量を26~28%削減する」という
目標を掲げていましたが、2017年にパリ協定からの離脱を表明しています。

日本の削減目標は26%

日本は、「2030年までに、2013年と比べて温室効果ガス排出量を26%削減する」
という目標を掲げています。

この目標を達成するために、政府は「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」の改正や
「地球温暖化対策計画」を策定し、政府や事業者、国民が一丸となって温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。

企業にも求められる「脱炭素経営」

現在、上述した温室効果ガス排出量の削減目標を達成するために、政府だけでなく企業にも「脱炭素経営」が求められる時代になっています。
その実現のために有効な、「SBTイニシアチブ」や「RE100」といった取り組みをご紹介していきます。

SBTイニシアチブ

SBTとは、「Science-based Targets」の略称で、日本語に訳すと「科学的根拠に基づく目標」という意味になります。
SBTイニシアチブは、「世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える」という目標達成のために、企業に対して科学的な知見に基づいた削減目標を設定するよう求めるイニシアチブで、2014年9月にWWF、CDP、UNGC(国連グローバル・コンパクト)、WRI(世界資源研究所)によって共同で設立されました。

2018年6月14日時点でSBTイニシアチブに加盟している日本企業は20社で、アメリカに次ぐ第2位となっています。
トヨタ自動車や日産自動車などの自動車業界をはじめ、ソニーなどの電気機器業界、食料品や医薬品、建設業など、様々な業種の企業が参加に乗り出しています。
今後さらにSBTイニシアチブへの加盟企業を増やしていくために、日本政府やWWFも様々な支援を積極的に行っています。

SBTイニシアチブへ加盟することで、「脱炭素経営」へ向けて大きく前進することができるでしょう

(参考資料:WWFジャパン「Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)とは」)

RE100

RE100とは、「Renewable Energy 100%」の頭文字を取ったもので、
企業の事業運営を2050年までに100%再生可能エネルギーでまかなうこと」を目標として定めている国際イニシアチブです。
RE100に参加するためには、「事業電力を100%再生可能エネルギーにする」と宣言することに加え、毎年進捗を報告する必要があります。再生可能エネルギーにも色々ありますが「自家消費型太陽光発電」が代表的な取り組み方法です。

その他の「脱炭素経営」を推進する取り組み

「脱炭素経営」を間接的・直接的に推進する取り組みやイニシアチブは他にもあります。たとえば、自社の組織活動が社会に与える影響に責任を持つ「CSR活動」や環境経営を後押しする「エコアクション21」、将来の世代の暮らしを持続可能な形で改善することを目指す「SDGs」などがその一例です。
こうした「脱炭素経営」を後押しする取り組みに欠かせないのが再生可能エネルギーである太陽光を活用した「自家消費型太陽光発電」です。
次の項目では、自家消費型太陽光発電について詳しく触れていきます。

自家消費型太陽光発電なら「脱炭素経営」の手助けに

「脱炭素経営」を実現には、火力発電と比較してCO2の排出が少ない太陽光発電を使った
自家消費型太陽光発電」がおすすめです。
上記で紹介したSBTイニシアチブやRE100などの中にも「自家消費型太陽光発電」を設置することで
参加条件の一部を満たせるものがいくつもあります。

「自家消費型太陽光発電」なら補助金等が支給される

また、「自家消費型太陽光発電」を設置することで補助金や税制優遇を受けることができる制度も存在します。

再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業
「再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業」は、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの発電設備や蓄電池を対象とした制度で設備費用や工事費用などに対して補助金が交付されます。対象となる事業者は地方公共団体、非営利団体、民間事業者および青色申告を行っている個人事業主となっています。2019年度の応募はすでに締め切られていますが、来年度以降も継続する可能性が高いので、注目しておくと良いでしょう。
中小企業等経営強化法
「中小企業等経営強化法」は、中小企業の生産性向上などを目的とした制度です。対象となる中小企業等に当てはまる場合には、「自家消費型太陽光発電」を設置して
「経営力向上計画」を提出し認定を受けることで、法人税・所得税において、導入設備の100%即時償却
または10%の税額控除(資本金3000万円超1億円以下の法人の場合7%)が受けられるという制度です。こちらの制度は直接的な補助金ではありませんが、税制優遇を受けることで節税につながり、さらなる設備投資などを後押ししてくれる制度となっています。※2021年3月末までの系統連系が必要です。

まとめ

「低炭素化」から「脱炭素化」へ向かう世界の流れは、
パリ協定をきっかけに、ようやく本格的になってきたと言えるでしょう。
この流れを止めないためには、各国が自分たちで定めた
温室効果ガス排出量の削減目標に向かって、努力を続けるしかありません。

日本でも、「2030年までに、2013年と比べて温室効果ガス排出量を26%削減する」という
目標を達成するために、企業に対して温室効果ガス排出量の削減が求められています。

こうした中、SBTイニシアチブやRE100などに参加することで、
効果的に脱炭素経営を実現していくことができるでしょう。

それだけでなく、企業価値の向上や、「自家消費型太陽光発電」の設置によって補助金や税制優遇を受けることも可能です。

地球温暖化が進むなか、自然豊かな地球を未来に残していくために、
ひとつでも多くの企業が脱炭素経営に参加することが今望まれています

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。

グリーンボンドって何?特徴や種類、メリット・デメリット

「グリーンボンド」についてご存じでしょうか。

グリーンボンドとは、企業や自治体などが、国内外のグリーンプロジェクトに使用する資金を調達するために発行する債券のことを指します。
この記事では、グリーンボンドについて詳しく知りたい方のために、

  • グリーンボンドの概要
  • グリーンボンド原則の構成要素
  • グリーンボンドの種類
  • グリーンボンドを発行するメリットとデメリット
  • グリーンボンドに投資するメリットとデメリット
  • グリーンボンドの市場規模

などについて、わかりやすく解説していきます。

グリーンボンドとは?

グリーンボンド

はじめに、グリーンボンドの概要や特徴、発行主体、投資家の特徴について解説していきます。

グリーンボンドとは

グリーンボンドとは、企業や地方自治体などがグリーンプロジェクト(環境改善を目的とする事業)の資金として使用することを目的に発行する債券のことを指します。
またグリーンボンドは、近年、世界的な拡大を見せているESG投資(環境や社会、企業統治に配慮している企業を選別して行う投資)の手法のひとつでもあります。

グリーンボンドの特徴

グリーンボンドの主な特徴は、以下の3つです。

  • 調達した資金の使いみちが、グリーンプロジェクト(環境改善事業)に限定される
  • 調達した資金は、確実に追跡・管理が行われる
  • 調達した資金の使いみちや管理について、グリーンボンド発行後のレポーティングで報告を行うことで、透明性が確保される

グリーンボンドの発行主体

グリーンボンドの発行主体(発行する団体)は、以下の3つです。

  • 自らが実施するグリーンプロジェクトの原資を調達する一般事業者
    (専らグリーンプロジェクトのみを行うSPCを含む。)
  • グリーンプロジェクトに対する投資・融資の原資を調達する金融機関
  • グリーンプロジェクトに係る原資を調達する地方自治体
(参考資料:環境省「グリーンボンド発行促進プラットフォーム」より引用)
一般事業者の発行事例

上記でご紹介した発行主体のうち、一般事業者のものでは2020年1月に100億円のグリーンボンドを発行した「オリックス株式会社」の事例があります。今回のグリーンボンドで調達した資金は、全額をオリックス株式会社が開発・運営している約1000MWの太陽光発電事業に充てられる予定です。
オリックス株式会社では、グリーンボンドによる資金で太陽光発電事業や風力発電事業などの再生可能エネルギー事業を進め、持続可能な社会の実現に貢献していくことを発表しています。

参考資料:オリックス株式会社「初のグリーンボンドの発行について」

地方自治体の発行事例1

東京都では、2019年10月に3回目となる「東京グリーンボンド」を発行しました。
発行額は100億円で、みずほ銀行や三菱UFJ銀行、住友生命保険など36団体が投資を表明しています。東京都は、3回目となるグリーンボンドにおいて発行額を超える需要があったことを明かし、グリーンボンドで集めた資金で環境施策を進め、スマートシティを実現すると発表しました。

参考資料:日本経済新聞「東京都の環境債、機関投資家36団体が投資表明」

参考資料:オリックス株式会社「初のグリーンボンドの発行について」

地方自治体の発行事例2

長野県では、数十億円規模を想定するグリーンボンドを、2020年度中に発行することを明らかにしています。長野県では、グリーンボンドで集めた資金の使いみちとして、小水力発電の整備や第三セクター「しなの鉄道」に対する省エネルギー車両の導入、県警察の駐在所2カ所におけるゼロ・エネルギー化モデル事業などを想定しています。

参考資料:日本経済新聞「長野県、グリーンボンド発行へ」

グリーンボンドの主な投資家

グリーンボンドの投資家としては、主にESG投資を行っている機関投資家やESG投資の運用を受託している運用機関などが考えられます。
ESG投資とは、世界的に広がりを見せている投資手法で、「環境・社会・企業統治」に配慮した企業を重視して行う投資のことです。

  • ESG投資を行うことを表明している年金基金、保険会社などの機関投資家
  • ESG投資の運用を受託する運用機関
  • 資金の使途に関心を持って投資をしたいと考える個人投資家
(参考資料:環境省「グリーンボンド発行促進プラットフォーム」より引用)

グリーンボンド原則(GBP)の構成要素

グリーンボンド

ここでは、グリーンボンド原則(GBP)の意味や4つの構成要素について解説します。

グリーンボンド原則(GBP)とは?

グリーンボンドは、その定義が法律で定められているわけではなく発行主体が使途を自己申告する債券です。
そのため、「グリーンボンドで集めた資金が本当に環境改善事業に使用されているか」が、投資する側には重要な問題となります。
そんなグリーンボンドの透明性を確保するために設けられたのが、グリーンボンドを発行する際の自主的なガイドライン「グリーンボンド原則(GBP)」です。
グリーンボンドを発行する企業や地方自治体などは、この「グリーンボンド原則」に則って発行を行うことが求められています。

グリーンボンド原則を構成している要素は、以下の4つです。

  • グリーンプロジェクトの対象区分を例示
    5つの環境目的(①気候変動緩和策、②気候変動適応策、③自然環境保全、④生物多様性保全、⑤汚染対策)に資するものを、適格性のあるグリーンプロジェクトとしています。
  • プロジェクトの評価と選定のプロセス
    グーリンプロジェクトにおける目標、選定プロセスなど投資家に伝えるべき点を規定しています。
  • 調達資金の管理
    グリーンボンドで調達した資金の透明性確保について規定しています。
  • レポーティング
    グリーンボンドで調達した資金の使いみちに関するレポーティング内容について規定しています。
グリーンボンド原則(GBP)の詳細については、「グリーンボンド発行促進プラットフォーム」のWEBサイトをご覧ください。
(参考資料:グリーンボンド発行促進プラットフォーム「グリーンボンド原則(GBP)」)

グリーンボンドの種類について

次に、グリーンボンドの種類について解説します。
どれも「グリーンプロジェクト(環境改善事業)に必要な資金を調達するために発行する債券」であることに変わりはありませんが、償還方法に違いがあります。

標準的なグリーンボンド(Green Use of Proceeds Bond)

「標準的なグリーンボンド」は、特定の財源によらず、発行体全体の現金や現金同等物などのキャッシュフローを原資として償還を行う債券です。

グリーンレベニュー債(Green Use of Proceeds Revenue Bond)

グリーンレベニュー債は、外部団体が行うグリーンプロジェクト(排水処理事業や廃棄物処理事業など)に必要な施設の設備や運営などを資金の使いみちとして、その事業の収益のみを原資として償還を行う債券です。

グリーンプロジェクト債(Green Use of Proceeds Project Bond)

グリーンプロジェクト債は、単一または複数のグリーンプロジェクト(再生可能エネルギー発電事業や省エネルギー事業など)の設備や運営などを資金の使いみちとして、その事業の収益のみを原資として償還を行う債券です。

グリーン証券化債(Green Use of Proceeds Securitized Bond)

グリーン証券化債は、グリーンプロジェクトに係る通常複数の資産(ソーラーパネル、省エネ性能の高い機器など)を担保として、それらの資産から発生するキャッシュフローを原資として償還を行う債券です。

(参考資料:環境省「グリーンボンド発行促進プラットフォーム」)

グリーンボンドを発行するメリット・デメリット

グリーンボンド

ここでは、グリーンボンドを発行する側のメリットとデメリットを紹介していきます。

グリーンボンドを発行するメリット

グリーンボンドを発行するメリットとしては、

  • ESG投資への対策(投資家層の多様化)
  • 環境経営によるイメージアップ
が挙げられます。

近年、世界的にESG(環境・社会・企業統治)に配慮している企業への投資が盛んになってきています。
そうした観点から従来の債券とは異なるグリーンボンドを発行することで、「ESG投資に積極的な投資家」からの投資が期待できるようになります。
また、グリーンボンドを発行して環境改善事業を推進・実行することで、環境経営の実績として企業のアピール材料にもなります。

グリーンボンドを発行するデメリット

グリーンボンドを発行するデメリットとしては、

  • 調達した資金は「グリーンプロジェクト」にしか使えない
  • グリーンボンド発行のために追加コストがかかる
が挙げられます。

グリーンボンドはグリーンプロジェクト(環境改善事業)への使用のために調達する資金なので、グリーンプロジェクト以外への使用は認められません。
グリーンボンドで調達した資金の使いみちは、厳重にチェックが行われます。

また、グリーンボンドを発行するためには、先程ご紹介したグリーンボンド原則(GBP)を遵守する必要があります。
そのため、通常の債券に比べて外部評価を受けるための手数料が必要になるほか、調達した資金の分別管理や使途報告などの時間的コストも必要になります。

グリーンボンドに投資するメリットとデメリット

ここでは、グリーンボンドに投資する側のメリットとデメリットを紹介していきます。

グリーンボンドに投資するメリット

グリーンボンドに投資するメリットとしては、

  • ESG投資を行える
  • 気候変動に関する中長期的なリスクヘッジ
が挙げられます。

グリーンボンドはESG投資の手法のひとつですので、ESG投資を行いたい投資家にとっては、その需要を満たせるでしょう。
また、地球温暖化の気候変動による中長期的な財務リスクに対し、グリーンボンド投資を行うことでリスクヘッジにも繋がります。

グリーンボンドに投資するデメリット

グリーンボンドに投資するデメリットに、「グリーンウォッシュ債券」の問題が考えられます。
環境省のグリーンボンド発行促進プラットフォームでは、「グリーンウォッシュ債券」について

実際は環境改善効果がない、または、調達資金が適正に環境事業に充当されていないにもかかわらず、グリーンボンドと称する債券

と説明しています。

(参考資料:グリーンボンド発効促進プラットフォーム「グリーンボンドとは グリーンボンドガイドライン」より引用)

グリーンボンドの信頼性の確保のために、「グリーンボンドガイドライン」が定められていますが、
あくまで自主的なガイドラインであり、法的拘束力やガイドラインに基づく罰則はありません。

(その他の法令等に抵触する場合に、当該法令等に基づく罰則等が課される場合はあります。グリーンボンドガイドラインをご参照ください)

投資を検討するグリーンボンドが「グリーンウォッシュ債券」に該当するかどうか、投資家の目線で慎重に判断したほうがよいでしょう。

グリーンボンドの市場規模について

グリーンボンド

ここからは、国内外におけるグリーンボンドの発行額についてご紹介していきます。

国内企業等によるグリーンボンド等の発行実績

2014~2019年の、国内企業等によるグリーンボンド等の発行実績は以下の通りです。

  • 2014年:発行総額5億円/発行件数1件
  • 2015年:発行総額5億円/発行件数2件
  • 2016年:発行総額1億円/発行件数4件
  • 2017年:発行総額2,223億円/発行件数11件
  • 2018年:発行総額5,363.7億円/発行件数34件
  • 2019年:発行総額8,238.3億円/発行件数58件
(参考資料:グリーンボンド発行促進プラットフォーム「市場普及状況(国内・海外)」グラフより引用)

発行総額・発行件数ともに急成長していることが分かります。

実際の発行例としては、先ほどグリーンボンドの発行主体の項目でもご説明した通り、
2019年10月に東京都が発行したグリーンボンドでは、機関投資家36団体が投資を表明しています。東京都はこれまでに3回のグリーンボンドを発行しています。

その他にも、オリックス株式会社が2020年1月に100億円のグリーンボンドを発行し、国内のグリーンボンド市場も活発になりつつあります。

(参考資料:時事ドットコムニュース「初のグリーンボンドの発行について」

世界のグリーンボンド発行額の推移

続いて、世界のグリーンボンド発行額の推移を見ていきましょう。

  • 2014年:発行総額366億米ドル
  • 2015年:発行総額418億米ドル
  • 2016年:発行総額872億米ドル
  • 2017年:発行総額1,608億米ドル
  • 2018年:発行総額1,709億米ドル
  • 2019年:発行総額2,312億米ドル
(参考資料:グリーンボンド発行促進プラットフォーム「市場普及状況(国内・海外)」より引用)

世界におけるグリーンボンド発行額も、2014~2019年の5年間で約6倍に増えています。このことからも、グリーンボンドの市場規模は国内外問わず拡大していることがわかります。

まとめ

この記事では、「グリーンボンド」の概要や原則(ガイドライン)、種類、メリット・デメリットなどについて解説してきました。
簡単にまとめると、グリーンボンドは国内外のグリーンプロジェクト(環境改善事業)に対する資金調達を目的として、主に企業が発行する債券です。

通常の債券と異なるのは、必ず「グリーンプロジェクト」に使うことが約束されている点と、それを証明するための報告を行う必要があることです。
グリーンボンドの発行額は国内外で急速に増えていますが、債券市場全体からみれば1~2%程度に過ぎません。しかし、逆に言うとまだまだ拡大途上であり、グリーンボンドの市場規模は今後も成長していく可能性が高いでしょう。

気候変動の問題と対策とは?地球温暖化対策推進法(温対法)についても解説!

温対法対策

最近、気候変動問題(地球温暖化問題)についてのニュースを、よくテレビなどで目にしませんか?
「なんとなく深刻なのは知っているけど、自分には関係ない。」
「企業レベルや個人レベルでできることは少ない。」
なかにはこんな風に思っている方も多いかもしれませんが、実は企業や個人レベルで行えることはたくさんあります。

  • 気候変動(地球温暖化)問題の現状と課題の確認
  • 世界における気候変動(地球温暖化)対策の取り組み
  • 日本における気候変動(地球温暖化)対策の取り組み

この記事では、この3つに焦点を絞り分かりやすく解説していきます。

気候変動問題の現状と課題とは?

CO2排出量削減

気候変動は、広くいえば天気の状態や気温、降雨量や風など、地球上の大気の状態が変化する現象のことを指します。ただし、とりわけ環境問題に関する際に「気候変動」という言葉を使う場合は、「地球温暖化」のことを指している場合が多いでしょう。

気候変動問題=地球温暖化問題

現在、地球全体で気候の変動が問題になっているのは、この「地球温暖化」があるためです。「地球温暖化」とは、地球の平均気温が上昇することでもたらされる現象や、それによって影響をうける生活や自然環境を指します。
地球の平均気温が変化することで地球上の自然環境は大きく影響を受けます。近年、日本や世界で多発している猛暑や巨大台風・ハリケーンも、地球温暖化が原因という意見もあります。

地球温暖化がもたらすさまざまな問題・リスク

地球温暖化が進むことによって、地球環境や私たちの生活にどのような影響や変化があるのかみてみましょう。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書で、気候変動(地球温暖化)によって以下のリスクがあると指摘されています。

  • 水資源への影響(水量や水質)
  • 海水面の上昇による沿岸での高潮被害リスク
  • 大都市部への大雨などによる洪水・水没リスク
  • 異常気象(巨大台風や大雨など)によるインフラなどの機能停止
  • 陸域、淡水、海洋生物の生息域の変化など
  • 空調のない都市部などで、熱波(異常な猛暑)による死亡や疾病リスク
  • 海水温の上昇によるサンゴの死滅や、海洋生態系の損失リスク
  • 農作物への影響
  • 水資源(灌漑用水や飲用水)不足と農業生産量の減少により、農家の収益が減少するリスク
  • 気温上昇や干ばつなどによって食糧不足に陥るリスク
  • 生態系サービスの損失(森林植物や野生動物の分布の変化)による農作物への被害リスク

参考資料:環境省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)等について」

また、1986~2005年の世界の平均気温を基準とした気温の上昇具合によって、以下の具体的なリスクも懸念されています。

  • 平均気温の上昇温度で懸念されるリスク
  • 1℃未満:異常気象の増加リスク
  • 2℃未満: サンゴ礁の死滅や北極の氷河の一部溶解、熱帯の感染症(マラリアなど)の拡大
  • 2℃:作物の生産量が局所的に減少
  • 2℃以上3℃未満:飲用水や灌漑用水に利用可能な水資源の減少
  • 3℃: 世界中の広範囲で生物の絶滅が発生する
  • 3.5℃: 北極の氷河がすべて溶け、海面水位が上昇する
  • 4℃: 地球上の多くの生物が絶滅の危機を迎える、世界中で食糧生産が困難となり食糧不足が発生する
参考資料:WWFジャパン「地球温暖化が進むとどうなる?その影響は?」

地球温暖化の原因は温室効果ガス

こうした地球温暖化の原因は「温室効果ガス」といわれています。温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)やメタン、一酸化二窒素、フロンガスなどの種類があります。
なかでも、影響を及ぼしているとされるのが二酸化炭素(CO2)で、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告書によると、実に二酸化炭素の影響が全体の76.7%にも上っています。大気中の二酸化炭素濃度は、産業革命が起こってからというもの、石油・石炭といった化石燃料の燃焼により著しく増加しました。
その結果、現在のような地球温暖化問題として、私たち人類全体に重い課題としてのしかかっているのです。

世界における気候変動(地球温暖化)対策の取り組み

CO2排出量削減

地球の気候変動(地球温暖化)問題に対して、世界の国々ではどういった対策をしているのでしょうか。
ここからは、世界における気候変動(地球温暖化)対策の取り組みについてみていきましょう。

気候変動枠組条約締約国会議(COP)

気候変動枠組条約締約国会議(COP)とは、後で紹介する「気候変動枠組条約」という国際的な温暖化防止条約に加盟する国々によって行われる国連会議です。気候変動枠組条約で合意した「大気中の温室効果ガス濃度を安定化させる」という目標の前進のために、締約国会議(COP)は毎年開催されており、2019年で25回目を迎えています。
気候変動枠組条約締約国会議(COP)は国際的な気候変動(地球温暖化)対策として重要な「京都議定書」や「パリ協定」を採択するという成果を残しており、世界の国々が一致団結して地球温暖化に対して取り組みを行ううえで非常に重要な国連会議になっています。

気候変動枠組条約(UNFCCC)

気候変動枠組条約は、「温暖化防止のため大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を究極の目的とした国際的な環境条約で、1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催されたUNCED(環境と開発に関する国際連合会議)で採択され、1994年に発効されました。
正式名称を「気候変動に関する国際連合枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change)」といい、英語の頭文字をとって「UNFCCC」とも呼ばれています。
現時点で197カ国が締結している気候変動枠組条約(UNFCCC)ですが、実は枠組みを規定しているだけで、具体的な温室効果ガスの削減目標までは定めていません。そういった部分を話し合うために先程も解説した締約国会議(COP)が開かれるようになり、次で解説する京都議定書やパリ協定に発展していきました。

京都議定書とパリ協定

京都議定書とパリ協定は、世界の気候変動(地球温暖化)対策の取り組みを語るうえで重要な存在といえます。

● 京都議定書

まず京都議定書ですが、先程ご紹介した気候変動枠組条約では定められていなかった温室効果ガスの削減目標
を具体的に数値化する形で、1997年に京都で開催されたCOP3において採択されました。
京都議定書の中身ですが、「2008年~2012年における二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出量を、先進国全体で最低-5%を目指す(1990年比)」というものでした。この京都議定書によって、欧州連合15カ国-8%、米国-7%、日本・ハンガリー・ポーランド-6%、といった具合で国ごとに法的拘束力をもった削減目標が割り当てられることになりました。
しかしながら、当時の世界最大の排出国だったアメリカが、中国など発展途上国への排出量削減義務が課されていないことなどを理由に、京都議定書から離脱してしまいます。結果的に、192カ国の国々によって京都議定書は締結されました。

● パリ協定

パリ協定は、京都議定書をさらに進める形で締結された協定で、2015年のCOP21にて採択されました。パリ協定の最大の目的は、以下の2つです。
○ 世界の平均気温上昇を、産業革命前と比較して「2℃未満」に抑えること(2℃目標)。
○ さらに、世界の平均気温上昇を「1.5℃未満」に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)。
また、パリ協定では上記の「2℃目標」および「1.5℃目標」を達成するために、加盟している各国が自主的な削減目標を作成し、その削減目標の達成のために国内で対策を行うことを義務付けています。

参考までに、2030年までの各国のCO2削減目標の一部を以下に示します。
○ 中国:GDP当たりのCO2排出量を「60~65%」削減する(2005年比)。
○ EU:温室効果ガス排出量を「最低でも40%」削減する(1990年比)。
○ カナダ:温室効果ガス排出量を「30%」削減する(2005年比)。
○ オーストラリア:温室効果ガス排出量を「6~28%」削減する(2005年比)。
○ 日本:温室効果ガス排出量を「26%」削減する(2013年比)。

● 京都議定書とパリ協定の違い

先進国に対して温室効果ガスの削減目標を定めた京都議定書に対し、パリ協定は発展途上国も含めたすべての国が参加する枠組みとなっています。また、京都議定書には参加しなかったアメリカが、パリ協定には参加しているという点も重要な違いといえるでしょう。しかし、2016年にドナルド・トランプ大統領が就任すると、パリ協定を離脱する意向を表明し、2019年11月に正式な離脱表明を行いました。
このことからも、気候変動(地球温暖化)対策に対する世界の国々の足並みは、まだ十分にそろっているとはいえないのが現状です。

世界中で広がりを見せるSDGs(持続可能な開発目標)

上記で挙げた京都議定書やパリ協定といった国際条約とは別に、2015年9月の国連サミットで採択された2016年から2030年までの国際目標として「SDGs(持続可能な開発目標)」があります。
SDGsは、多様性を大切にし「誰一人取り残さない」持続可能な社会を実現することを目的としており、17の目標と169のターゲット、232の指標が決められています。その13番目の目標には、「気候変動に具体的な対策を」として、地球温暖化に対する対策も盛り込まれています。
SDGsは、国だけでなく企業などの民間団体が主体となって取り組んでいくことも、大きな特徴の1つです。実際に、世界の環境先進国では、企業や団体が主体となってSDGsに関するさまざまな取り組みが行われています。

中国やインドなどの新興国では、地球温暖化対策として再生可能エネルギーの導入が進んでいます。株式会社資源総合システムの調査によると、2016年~2018年にかけて太陽光発電の年間導入量1位は中国です。

● 中国の太陽光発電導入量
○ 2016年:34.55GW
○ 2017年:53.07GW
○ 2018年:44GW

なお、新興国であるインドも、2017年には日本の太陽光発電の年間導入量を追い抜き、世界第3位となっています。火力発電に比べて二酸化炭素排出量が少ない太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーは、今後ますます世界中で導入が進んでいくと予想されています。

日本における気候変動(地球温暖化)対策の取り組み

CO2排出量削減

続いて、日本における気候変動(地球温暖化)対策の取り組みをみていきましょう。

COPで「化石賞」に選ばれた日本

先程ご紹介した気候変動枠組条約締約国会議(COP)に参加しているNGOネットワーク「CAN(気候変動アクション・ネットワーク)」が、地球温暖化対策に消極的とみなされた国に対し「化石賞」を贈っています。
2019年12月2日から13日にスペイン・マドリードで開かれたCOP25において、日本はこの不名誉な「化石賞」を受賞してしまいました。(化石賞はCOPの会期中、毎日選定されて発表されているため、日本以外の国も選ばれています)
受賞の理由としては、石炭火力発電を今後どうしていくのかについての言及がなかったことや、国際社会が求めている脱石炭化(再生可能エネルギーなどへの方向転換)や温室効果ガスの削減目標を引き上げる意思を示さなかったことなどが挙げられています。
こうした中、今世紀後半のできるだけ早い時期に「脱炭素社会」を実現することを目標としている日本では、さらなるイノベーションや再生可能エネルギーへの転換を進めていく必要があります。

地球温暖化対策推進法(温対法)でCO2排出量を削減

「化石賞」に選ばれてしまった日本ですが、気候変動(地球温暖化)の問題に対して何も行っていないという訳ではありません。日本で地球温暖化対策として、「地球温暖化対策推進法(通称:温対法)」という法律を作り、地球温暖化防止に取り組んでいます。(正式名称は「地球温暖化対策の推進に関する法律」)
この温対法によって「特定排出者」に認定された事業所・事業者は、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を算出し、国へ報告する義務が生じます。温対法が定めた排出量の報告や虚偽の報告を行った場合、20万円以下の罰金が発生します。
温対法に則って取り決めた自社の温室効果ガス削減目標に届かない場合は、「J-クレジット」という温室効果ガスの削減量を取引する制度も設けられています。

日本企業にも自家消費型太陽光発電の導入が拡大中

地球温暖化を防止するための世界の動きは、日本にも確実に影響を与え始めています。たとえば、環境・社会・ガバナンスを重視する会社に対して積極的な投資を行う「ESG投資」は、企業にとってはビジネスを考えるうえでも重要なポイントになってきています。

またそれ以外にも、エコアクション21やISO14001など、環境へ配慮した経営が日本企業に対しても求められていることは事実です。こういった環境経営への取り組みは、大企業だけではなく中小企業にも求められており、その1つの手段として「自家消費型太陽光発電」という選択肢があります。
自家消費型太陽光発電とは、発電した電気を自社で消費する形態の太陽光発電のことで、工場の屋根などに取り付けて発電を行い、電力会社からの電気購入量を減らす企業が増えています。こういった企業ごとの取り組みも、国がパリ協定で定めた温室効果ガスの削減目標(2013年比で26%削減)を達成するために重要な要素のひとつです。
また、それだけではなく、企業側にも電気料金の削減や、「環境経営に取り組んでいる企業」として企業イメージがアップするといったメリットもあります。

まとめ

この記事では、気候変動問題(地球温暖化問題)の現状と課題を確認するとともに、世界や日本で行われている地球温暖化対策について紹介してきました。
総括すると、気候変動(地球温暖化)は今もなお進行し続けている状態にあり、かなり深刻な状態になりつつあると世界は受け止め始めています。それに対し、各国の足並みは決してそろっているとはいえず、対策も後手になってしまっている印象を受けます。
こうした状況のなかで、今もなお化石燃料に依存している日本では、再生可能エネルギーへの大胆な方向転換が、国際的にも期待されています。
また、中国などの新興国でも、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が目覚ましい勢いで進んでおり、再生可能エネルギーが地球温暖化を防ぐ要となりつつあります。
まずは、企業活動において発生するCO2排出量削減のために「自家消費型太陽光発電」の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。