再生可能エネルギー賦課金(再エネ賦課金)とは?いつまで続く?推移予想や削減対策

「電気代の請求書に含まれている再エネ賦課金”って何? 意外に高い!」と思ったことはありませんか?

ここでは、再エネ賦課金の内容や2021年の単価、これまでの推移や将来的、対策などについても解説し、
また再生可能エネルギー賦課金への有効な対策となる「自家消費型太陽光発電システム」もご紹介します。

そもそも、再エネ賦課金とは?

電気料金を気にされている方なら名前は聞いたことがあるかもしれませんが、
「再エネ賦課金」について、成り立ちや価格の決まり方などを詳しくご存知でしょうか。

再エネ賦課金は、正式名称を「再生可能エネルギー賦課金(ふかきん)」と言い、
毎月の電気代に「再エネ発電賦課金等」といった名前で加算されています。

FIT(固定価格買取制度)と再エネ賦課金の関係

「再エネ賦課金」は、太陽光発電の売電価格を決定しているFIT(固定価格買取制度)と
深いかかわりがあります。

太陽光発電は、FIT(固定価格買取制度)によって高い売電価格が設定され、
それにより一般住宅などへの普及が進んだ背景があります。

しかし、その高額な売電価格は、電力会社が負担するわけではなく、
国民全体が「再エネ賦課金」という形で負担をしています

再エネ賦課金と太陽光付加金の違い

再エネ賦課金は、もともと「太陽光発電促進付加金(太陽光発電サーチャージ)」という名称でしたが、
2012年のFIT(固定価格買取制度)の法改正から、
現在の「再生可能エネルギー賦課金」へと名称が変更されました。

なぜなら、2012年より以前の「太陽光発電促進付加金」だった時代は、
まだ太陽光発電以外の再生可能エネルギーがほとんど普及していなかったため、
「太陽光発電」に限定した名称でも問題ありませんでした。

ところが、2012年の段階になると、太陽光発電のほかに
風力発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギーも普及しはじめていたため、
「再生可能エネルギー賦課金」という名称に変更されたのです。

2021年の再エネ賦課金の1kWあたりの単価

再エネ賦課金は、毎年「電気使用量1kWあたり◯円」という形で料金が決められ、
その価格が1年間変わりません。

なお、2021年5月以降の再エネ賦課金の単価は「3.36円/kWh」となっています。

標準家庭の再エネ賦課金は1,000円超

3人家族の標準家庭の電力使用量を370kWhとした場合、
2021年5月以降の再エネ賦課金負担は「1,243円」となり、1,000円を超えてしまいます。

1人暮らしの場合や、5人家族以上の世帯の場合なども見てみましょう。

2021年5月以降の再エネ賦課金の世帯別負担額

1人暮らし(185kWh) 621円
2人世帯(320kWh) 1,075円
3人世帯(370kWh) 1,243円
4人世帯(400kWh) 1,344円
5人世帯(450kWh) 1,512円
6人世帯(560kWh) 1,881円

ご覧の通り、再エネ賦課金の負担は電気の使用量に比例して増加するため、
世帯人数が多くなるほど再エネ賦課金、負担も大きくなる傾向にあります。

そしてこれは、個人・法人に関わらず、電力の使用量に応じて支払う必要があるため、
一般家庭と比べて非常に多量の電気を使う法人の場合、その負担額はとても大きなものです。

これまでの再エネ賦課金の推移

これまでの再エネ賦課金の推移

上記の項目で、再エネ賦課金の単価は毎年決められているとご説明しました。
ここでは、これまでの再エネ賦課金の推移についてご紹介していきます。

再エネ賦課金の推移

2012年 0.22円/kWh
2013年 0.35円/kWh
2014年 0.75円/kWh
2015年 1.58円/kWh
2016年 2.25円/kWh
2017年 2.64円/kWh
2018年 2.90円/kWh
2019年 2.95円/kWh
2020年 2.98円/kWh
2021年 3.36円/kWh

(参考資料:東京電力ホールディングス「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」より引用)

ご覧の通り、再エネ賦課金は2012年からスタートした当初、賦課金額が少なかったのは、
まだ太陽光発電などの再生可能エネルギーがあまり普及していなかったためです。

2012年~2015年にかけて、特別優遇期間が設けられた10kW以上の
産業用太陽光発電が爆発的に増え、多くの太陽光発電によって創られた電気を
各電力会社が買い取ることになり、それにともなって2016年以降の再エネ賦課金も
大きく値上がりする結果となりました。

再エネ賦課金は消費税込み

再エネ賦課金には消費税が含まれています。
2021年の再エネ賦課金「3.36円/kWh」であれば、その10%である約0.34円が消費税分となります。

ちなみに、その他の基本料金や電力量料金、
燃料費調整額などの電気料金もすべて消費税を含む額となっているため、
もし今後、増税などがあった場合には、それにともなって料金が高くなる可能性があります

再エネ賦課金はいつまで続くの?

前述の項目でも説明したとおり、再エネ賦課金はFIT(固定価格買取制度)と密接に関わりのある制度です。
そのため、少なくともFIT(固定価格買取制度)が終了するまでは継続されると予想できます。

なお、2013年に環境省が独自に今後の再エネ賦課金の推移を推計した
「平成25年度2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討報告書」によると、
再エネ賦課金は2030年をピークに値下がりに転じ、2048年頃にやっと0円になる試算を出しています。

ただし、こちらの推計は、FIT(固定価格買取制度)が少なくとも2030年までは継続することを
前提としたものであり、2030年時点の賦課金単価が「2.95円」と予測されていますが、
現実には2019年で2.95円に達してしまっており、現実の推移とは少し乖離が見られます。(参考:環境省

再エネ賦課金が値下がりする理由

再エネ賦課金が、今後2030年あたりをピークに値下がりする理由として、
FIT(固定価格買取制度)期間の終了が挙げられます。

FITによる固定価格での電力買取は、10kW未満の家庭用太陽光発電で10年、
10kW以上の産業用太陽光発電で20年と定められています。

はじめにFIT期間が切れるのは2019年で、2009年に太陽光発電を設置した人が対象となります。
こうしたFIT期間満了が続々と起こるため、正確な時期は定かではありませんが、
将来的に再エネ賦課金は0円になるとが予想されます。

電力中央研究所のディスカッション資料によると、環境省の見通しよりもまだ高騰が続くと予想され、
2032年度には最大4.72円にまでなる可能性まであるとしています。(参考:電力中央研究所

再エネ賦課金の対策は自家消費型太陽光発電?!

「将来的には再エネ賦課金は無くなる」とは言っても、まだまだ先の話です。
どんなに地道に節電をしても、当面は再エネ賦課金は毎年値上がりし、経営を圧迫していきます。

一般家庭では家計に対してのインパクトは小さいですが、
多くの企業にとっては電気代は悩ましい経費であり、その経費を減らすことができたらそのまま利益を増やすことができます

この再エネ賦課金に対する有効な対策として「自家消費型太陽光発電」があります。

「自家消費型太陽光発電」で電気を創る

太陽光発電は、自社の屋根や敷地、あるいは土地を購入して太陽光パネルを設置して、
FIT(固定価格買取制度)に基づいて長期間、売電収入を得るというイメージが強いかと思います。

一方で、「自家消費型太陽光発電」は、屋根に太陽光パネルを設置するまでは一緒ですが、
発電した電気は売るのではなく自社で優先的に消費します。

この「自家消費型太陽光発電」により、電力会社からの買電を減らすことができますので、
結果的に「再エネ賦課金」の金額も抑えることが可能となります。
「自家消費型太陽光発電」はFIT(固定価格買取制度)ではないため国民全体への負担もありませんし、
電気の自給自足、地産地消という環境経営につながります。

また、太陽光発電と一緒に蓄電池を導入することで、
業務時間外や休業日などに発電した電力を、業務時間で消費するということもできるため、
よりエネルギーの自給自足に近づくことも可能です。

まとめ

FIT(固定価格買取制度)と密接な関係にある「再エネ賦課金」は、
太陽光発電の売電価格を国民全体で負担するというものです。

2021年5月以降の再エネ賦課金の単価は、「3.36円/kWh」に決定しています。
この単価は1kWhごとの金額ですので、実際はこの単価に電気使用量を乗じた金額が、
再エネ賦課金として電気代の請求書に記載されます。

再エネ賦課金は、今後2030年をピークにして、2048年頃には0円になると環境省が予測していますが、
現時点で既に当初予測より高い金額になっており、将来どうなるか正確なところはまだ分かりません。

いずれ終了するにしても、再エネ賦課金の負担を減らしたい場合には、
「自家消費型太陽光発電」を設置して電力会社からの購入電力量を削減する方法が有効です

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。

再生可能エネルギーとは?今後の課題やメリット・デメリット

再生可能エネルギーは、太陽光発電だけだと思っていませんか?
実は、太陽光発電以外にも、再生可能エネルギーには様々な種類が存在します。

この記事では、そんな再生可能エネルギーの種類をご紹介するとともに、
再生可能エネルギーのメリットやデメリット(問題点)、
再生可能エネルギーの普及を支えている「固定価格買取制度(FIT)」などについてご紹介していきます。

再生可能エネルギーとは?

再生可能エネルギーとは?

再生可能エネルギーとは、いずれ枯渇してしまう石油や石炭といった「化石燃料」とは異なり、
地球上のどこにでも存在していて、CO2を増加させず国内で生産可能なエネルギーのことを指します。

代表的な例で言うと、太陽光や風力、水力といった再生可能エネルギーがあります。
再生可能エネルギーの種類について詳しくは、以下の項目でご紹介します。

再生可能エネルギーの種類

再生可能エネルギーには、主に以下のような種類があります。

太陽光発電

太陽光発電とは、太陽の光エネルギーを電気に変換する再生可能エネルギーです。
太陽から降り注ぐ光を太陽光パネル(半導体素子)に当てることで、電気が発生する仕組みを利用しています。

変換効率は素材や用途(住宅用・産業用)で異なり、以下が現在の変換効率の目安となっています。

住宅用(シリコン単結晶パネル) 約16~21%
住宅用(シリコン多結晶パネル) 約15~16%
産業用(シリコン単結晶パネル) 約16~20%
産業用(シリコン多結晶パネル) 約15.5~16.5%
住宅用・産業用(CIS系太陽電池) 約14~15%

日本では後ほど紹介する固定価格買取制度(FIT)の影響などにより、
一般家庭なども含めて最も普及している再生可能エネルギーと言えます。

風力発電

風力発電は、風の力で風車を回し、その回転エネルギーによって発電機を動かして電気をつくる仕組みです。
電力へのエネルギー変換効率は約30%~40%で、再生可能エネルギーでは水力発電に次ぐ高さです。

風力発電には陸上風力(陸地に設置する風力発電)と洋上風力(海の上に設置する風力発電)の2種類があり、
風車の種類にもプロペラ型やジャイロミル型、サボニウス型などが存在します。

水力発電

水力発電は、水を高いところから落下させることで生まれる
位置エネルギーを利用して、水車を回転させて電気をつくる仕組みです。
電力へのエネルギー変換効率は再生可能エネルギーの中では最も高い約80%となっています。

「ダム式」、「水路式」、「ダム水路式」の3種類に分けることができ、
日本では黒部ダムや豊稔池ダムなどが有名です。
また、小さい川でも発電を行える「マイクロ水力発電」も、一部で導入が進んでいます。

地熱発電

地熱発電は、「地熱貯留層」と呼ばれる地下1,000~3,000mの場所から汲み上げた蒸気や熱水によって
タービンを回して発電します。「地熱貯留層」とは、地上で降った雨が
深さ数千mのマグマ溜まりに到達して蒸発し、熱水として溜まっている場所のことを言います。

なお、地熱発電には、鋼管杭を使って貯留層から熱水(200度以上)を直接くみ上げて利用する
「フラッシュ方式」と、すでに掘削済みの温泉熱や温泉井戸の蒸気を利用する
「バイナリ方式」の2種類があります。

「バイナリ方式」のほうが新たに掘削する必要がなく環境にも優しいため、
今後の普及が期待されています。

(参考資料:資源エネルギー庁「地熱発電」)

バイオマス発電

バイオマス発電は、家畜や動物の糞尿や食品廃棄物、廃材などの生物資源(バイオマス)を
直接燃焼またはガス化することでタービンを回し発電する手法です。

バイオマス発電は廃棄物の再利用にも繋がることから、
SDGsなどが目指す「循環型社会」にも貢献できる再生可能エネルギーとして注目を集めています。

太陽熱利用

太陽熱利用は、太陽光の熱エネルギーを太陽集熱器や屋根集熱面、
太陽熱温水器などを利用して集め、お湯を沸かしたり暖房に利用したりします。

太陽光発電と似ていますが、太陽熱利用の場合、発電は行えません。
また、構造が単純なため、比較的昔から利用されている再生可能エネルギーです。

雪氷熱利用

雪氷熱利用は、雪や氷を保管しておき、その冷熱を利用する再生可能エネルギーです。
主な利用方法としては、倉庫に雪や氷などを保管して野菜や食物などを保存する氷室(雪室)や、
雪や氷の冷熱を循環させて冷蔵庫や冷房代わりに使用する「雪冷房」や「雪冷蔵」、
「アイスシェルター」などがあります。

再生可能エネルギーを活用するメリットは?

再生可能エネルギーを活用するメリットは?

再生可能エネルギーの種類が分かったところで、
ここでは再エネを活用するメリットについてご紹介していきます。

CO2等の温室効果ガスを排出しない

まず、再生可能エネルギーは地球温暖化の原因と言われている温室効果ガスを排出しません。(太陽光発電は火力発電と比較して温室効果ガスの排出量が少ないです。)
そのため、世界中で再生可能エネルギーを導入する動きが広まっています。

今、世界の国々ではパリ協定に基づいて、二酸化炭素など温室効果ガスの削減目標を定め、
その削減目標に向けた削減努力を行っています。
再生可能エネルギーの普及は、この温室効果ガス削減目標を達成するためには必要不可欠と考えます。

エネルギー自給率の向上に期待できる

太陽光発電や風力発電など、地球上のあらゆる場所でエネルギーをつくりだすことができる
再生可能エネルギーは、資源に乏しい日本のエネルギー自給率を向上させる切り札になるかもしれません。

資源エネルギー庁のWEBサイトで公表されているデータによると、
日本のエネルギー自給率は2016年時点で8.4%と、
1973年の第一次石油ショックの頃(9.2%)よりも低くなっています。
その理由は、国内で使用するエネルギー源の8割以上を海外に依存しているためです。

2017年時点で、日本における再生可能エネルギーの比率は約16%となっています。
それに比べて海外の電源構成における再エネ比率を見てみると、
カナダ65.7%、イタリア35.6%、ドイツ33.6%、スペイン32.4%と、
日本の再生可能エネルギー比率を大きく上回っています。
(参考資料:資源エネルギー庁「総論|再エネとは」)

日本においてエネルギー自給率を伸ばせるかどうかは、
再生可能エネルギーの普及にかかっていると言っても過言ではありません。

再生可能エネルギーのデメリットや問題点は?

再生可能エネルギーのデメリットや問題点は?

再生可能エネルギーの良いところばかりを見てきましたが、
ここからはデメリットや問題点についても見ていきましょう。

発電コストが高い

再生可能エネルギーの普及をさまたげている原因として、発電コストが高いことが挙げられます。
しかしながら、海外では他の主力電源と張り合えるほどに発電コストが低下していますので、
日本においても再生可能エネルギーの発電コストを下げ、主力電源化することは不可能ではありません。

そのための取り組みとして、後ほどご紹介する固定価格買取制度による
再生可能エネルギーの普及や、その先にある入札制度の導入、
また需要が増加することによる技術開発と導入費用の低下により、
発電コストを低下させる努力を継続する必要があります。

エネルギー変換効率が低い

水力発電を除いて、太陽光発電や風力発電など主力となる再生可能エネルギーの発電効率は、
火力発電や原子力発電よりも低くなってしまいます。

発電効率(エネルギー変換効率)の比較
太陽光発電 約14~21%
風力発電 約30%~40%
火力発電 約42~61%
原子力発電 33%

エネルギー変換効率が低いことも、主力電源化をさまたげている要因の1つですので、
今後の開発技術の進歩によって変換効率が高くなっていくことが期待されています。

発電量が天候などに左右される

再生可能エネルギーのデメリットとして、発電量が天候や季節といった
環境的要因に左右されるため安定しづらいという点があります。

天候の悪化などが続いた場合、電力の供給が滞ったり、
需要と供給のバランスが崩れて大規模停電の原因になるといったリスクがあります。

このデメリットを解消するために、需要と供給のバランスをコントールする
VPP(バーチャルパワープラント)と呼ばれるシステムの実用化に向けた取り組みも進んでいます。

まとめ

再生可能エネルギーには、太陽光発電や風力発電の他にも、バイオマス発電や太陽熱利用など
様々な種類があることがお分かり頂けたのではないでしょうか。

CO2など温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギー(太陽光発電は火力発電と比較して温室効果ガスの排出量が少ないです。)は、パリ協定によって定められた地球温暖化防止のための温室効果ガス削減目標に向けて、欠かせない存在と言えます。

今後、日本における再生可能エネルギーの普及率を海外並にまで引き上げるためには、
発電コストのダウンや発電効率の上昇など、さまざまな課題をクリアしていく必要があります。

水力発電のメリット・デメリットとは? ダム式などの仕組みも解説

水力発電について、どんなイメージを持っていますか?
真っ先に思い浮かぶのは大きなダムかもしれませんが、実は水力発電にも様々な種類や発電方法があります。

この記事では、水力発電の種類や仕組み、メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。

水力発電とは?どんな仕組み?

水力発電とは、文字通り水の力で発電を行うことを指しますが、
仕組みや種類まで理解している人は意外と少ないかもしれません。
ここでは、水力発電の仕組みや種類、歴史などについて解説していきます。

水力発電が電気を生み出す仕組み

水力発電が電気を創り出す仕組みは意外と単純です。
水を高いところから低いところへ落とし、そのときの水の勢い(位置エネルギー)で
水車(タービン)を回転させ、水車と直結している発電機を動かして発電します。

実は、発電機を動かして発電を行うのは、水力発電に限ったことではありません。
発電機を動かす原動力が違うだけで、火力や風力、原子力なども同じ理屈です。
ただし、太陽光発電だけは発電機を用いず、太陽光パネルで発電します。

水力発電を構造物で分けると3種類

水力発電を構造物による違いで分けると、「ダム式」、「水路式」、「ダム水路式」の3種類になります。

ダム式

ダム式の水力発電は、両岸に岩がそびえている河川を横断する形でダムを建設して人工的に湖(池)を作り、
その真下に作った発電所に水を落とすことで発電する仕組みです。
後で紹介する発電方式での分類では、貯水池式や調整池式と組み合わせて運用されます。

水の落差を利用する性質上、ダムの水位が上がるほど勢いのある水流で
より多くの発電をすることが可能です。
反対にダムの水位が低くなると落差が小さくなり、発電量が落ちてしまいます。

ダム式のデメリットとしては、ダムを建設できるような、
両岸に岩がそびえているといった条件に合う河川が少ないことです。
また、高度経済成長期からのダム建設ラッシュにより、
日本において大規模なダムが建設できるような河川はもうほとんど残っていません。

ちなみに、ダムと聞くと表面から水流が吹き出している姿を想像しますが、
実際に水力発電で使用する水流はダムの内側を通って発電所の水車へ流れ込む仕組みになっています。

水路式

水路式とは、水路を用いて河川の水を導き、
落差のある場所から水を落とすことによる勢い(位置エネルギー)で発電する方法です。

具体的には、河川の上流に水を引き入れるための取水堰(しゅすいぜき)を作り、
引き入れた水を河川の流れよりも傾斜がゆるい水路に通して落差のある場所まで導きます。

そして、落差のある場所から水を落として発電を行う仕組みです。
水路へ通した川の水は、最終的に元の川へ戻るようになっています。

メリットとしては小さな取水堰を作るだけなので比較的コストがかからないことが挙げられます。
反面、デメリットとしてはダムのように水を貯めるわけではないため、
落差のある場所から落としても水の勢いが弱く、発電量が少ないということが挙げられます。

こうしたことから、水路式は比較的小規模の水力発電施設で用いられる場合が多くなります。

ダム水路式

ダム水路式は、上記で紹介したダム式と水路式を合わせた構造で、
ダムによって貯めた水を水路を用いて落差のある場所まで導き、
そこから水を落とすことによる勢い(位置エネルギー)で発電を行う方法です。

ダム水路式は、ダム式に比べると高い堤防を作る必要がないため低コストで済み、
水路式に比べると水の勢いを確保できるためより多くの発電量が期待できるといったメリットがあります。
また、ダム式は建設できる場所に限りがありますが、ダム水路式はより多くの場所で建設が可能です。

水力発電を発電方式で分けると4種類

水力発電を発電方式による違いで分けると、
「流れ込み式(自流式)」、「調整池式」、「貯水池式」、「揚水式」の4種類になります。

流れ込み式(自流式)

流れ込み式(自流式)は、川の流れをそのまま発電に利用する方式を指します。
流れ込み式の発電量は川の水量に左右されるため、
豊水期には発電量増え、渇水期には発電量が減ります。

発電量が安定しないという欠点はあるものの、
他の発電方式に比べて建設コストが最小限で済み、環境への影響も少ないというメリットがあります。

調整池式(小規模ダム)

調整池式とは、川の水を貯水する調整池を作り、
その中に1日~1週間分程度の発電用水を貯めておく発電方法です。
調整池に貯水した水は、電力消費が大きくなる時間帯に流すことで
発電量を調整することができます。

流れ込み式よりも効率的な発電ができるため、
短時間の天候の変化や電力需要の変化にも対応できます。
また、貯水量も貯水池式(ダム)に比べれば少ないため、環境への影響も限定的です。

貯水池式(ダム)

貯水池式はいわゆるダムのことで、構造物で分けた中のダム式やダム水路式に当てはまります。
ダムで河川をせき止め、梅雨や雪解け、台風、大雨などの満水期にできる限り貯水しておき、
電力需要が高まる夏場や冬場に合わせて放水して発電します。

欠点としては、貯水池式に適した河川が日本では限られていることや、
巨大な施設になるため周辺地域の水没、環境変化などが懸念されます。
そのため、周辺地域の住民の方から協力を貰えなければ建設が行なえません。

揚水式

水力発電所の上部と下部に調整池(ダム)を作り、
昼間の電力消費が多い時間帯は上部の調整池から下部の調整池へ水を落とし発電します。

夜間になったら、余剰電力(余った電力)を使用して、
下部の調整池から上部の調整池へ電動ポンプで水を汲み上げて移動しておきます。

揚水式による発電はエネルギーロスが大きいため効率的とは言えませんが、
上部の調整池に水が溜まっているときならいつでも発電を行えることから、
巨大な蓄電池としてとらえることも可能です。

水力発電の歴史

はじめて水力発電によって電気がつくれたのは、110年以上も昔の明治20年代です。
その当時建設された水力発電所としては、仙台「三居沢発電所」や京都「蹴上発電所」が有名で、
現在も電気をつくり続けています。

水力発電所の意義は時代とともに大きく変わっており、
オイルショック以前は高度経済成長による爆発的な電力需要の増加を支えるために、
ダム式を中心とした大規模な発電能力が求められました。

オイルショック以降は、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない、
石油に替わる再生可能エネルギーとして、
その他の再生可能エネルギーと並んで存在感を増してきています。

(参考資料:経済産業省 資源エネルギー庁「水力発電の歩み|社会に貢献する水力|水力発電について|資源エネルギー庁」)

水力発電のメリット

水力発電のメリット

ここからは、水力発電のメリットについて解説していきます。

温室効果ガスを排出しない

水力発電のメリットとして最初にご紹介したいのは、
二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないクリーンな再生可能エネルギーである、という点です。

現在、地球温暖化の進行を止めるために、
世界の多くの国々では温室効果ガスの削減目標を定め、それに向かって様々な努力が行われている最中です。

そうした中、2015年に開かれたパリ協定において、
日本は2030年までに2013年比で温室効果ガスの排出を26%削減することを目標として掲げました。
この温室効果ガスの削減目標を達成するために、
水資源豊富な日本では、110年前から行われている再生可能エネルギー「水力発電」が、
今後ますます重要になっていくでしょう。

発電や管理にかかるコストが安い

水力発電のメリットとして、原子力発電や火力発電に比べて
発電・管理・維持にかかるコストが安いという点です。

原子力発電にはウラン燃料、火力発電には石油・石炭といった化石燃料が必要となります。
これらはすべて有料で、現状では海外から輸入してまかなっています。

また、こうした化石燃料などが値上がりすると、「燃料調整費」という形で
一般家庭の電気代にしわ寄せが来ています。

それに比べ、水力発電の原料である水は無料です。
特に水資源が豊富な日本では、水力発電はとても好相性と言えます。
また、原子力発電や火力発電に比べると、発電施設の管理や維持も低コストで済みます。

再生可能エネルギーである

「温室効果ガスを排出しない」というところでも少し触れましたが、
水力発電は太陽光発電や風力発電などと同じく、再生可能エネルギーです。

再生可能エネルギーとは、水力、太陽光、風力、地熱といった
自然界に常に存在するエネルギーのことを指し、石油など化石燃料と比べて、

  • 枯渇することがない
  • 地球上のどこにでも存在する
  • CO2など温室効果ガスを排出しない(※太陽光発電は火力発電と比較してCO2の排出が少ないです)。

といった良い特徴があります。

また水力発電の場合ですと、発電として使用した水は海へ戻り、
蒸発して再び雨となりまた河川やダムへ戻ってきます。
こうした自然の循環によって「再生可能」という点が、再生可能エネルギーの最大の特徴です。

エネルギー変換効率は驚異の80%!

エネルギー変換効率とは、熱エネルギーや太陽光エネルギーなどを、
どのくらい電気に変換できるか、を示した値です。
この変換効率が高いほど、無駄なく発電を行えることになります。

一般的な火力発電の変換効率は35~43%程度、原子力発電で33%、
再生可能エネルギーの風力発電で25%、太陽光で15~20%という中、
水力発電は驚異の80%という、断トツで高い変換効率を誇ります。

エネルギー変換効率一覧

水力発電 80%
火力発電(LNG) 55%
火力蒸気T 43%
ガスタービン 35%
原子力発電 33%
風力発電 25%
太陽光発電 15~20%
地熱発電 8%
海洋温度差 3%
バイオマス発電 1%

(参照:関西電力「再生可能エネルギーへの取組み 水力発電の概要」)

水力発電の変化効率が高い理由としては、水を高い場所から低い場所へ落とす際の
「位置エネルギー」や「運動エネルギー」を最小限のロスで電気へ変えられることが挙げられます。

電力需要の増減にも対応可能

先程ご紹介した上下2つのダムを用いて発電を行う「揚水式」の水力発電は、
電力の需要にあわせて、足りない場合は発電を行い、
電気が十分ある場合は発電を行わないといった対応が柔軟に可能です。

こうした水力発電の「貯めておける」という点も、
他の再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電より優れているポイントと言えます。

水力発電のデメリット

続いて、水力発電のデメリットについても確認していきましょう。

発電量が降水量に左右される

水力発電のデメリットは、十分な発電を行うためには十分な水が必要という点です。
そのため、雨が少なく水不足などに陥ってしまうと、川やダムの水が減り、
十分な発電を行えなくってしまう可能性があります。

ダム建設に多額の初期費用がかかる

メリットの項目で、水力発電は「発電や管理にかかるコストが安い」とご紹介しました。
しかし、ダム式での発電の場合は、最初にダムの建設費用が必要となります。
ダムの建設費用は規模にもよりますが、有名な黒部ダムでは当時の金額で513億円以上の費用がかかったとされています。
(金額の参考資料:関西電力「正規の大工事~くろよん建設ヒストリー~」より)

ダムの建設は基本的に公共事業で行われるため、
こうした費用は税金から支出されることになります。
こうしたことから、ダムの建設そのものを見直す活動もかなり以前から行われており、
その影響で建設を中止したダムも多くあります。

ダムが周辺住民や環境に影響を与える

水力発電の肝となるダムが抱える問題はまだあります。
ダム建設によって、広範囲の地域が水没し、その地域に住んでいる人が移住を余儀なくされたり、
自然環境が破壊されたりもしてきました。

こうした中で、世界では「脱ダム宣言」をはじめとした反対運動が強くなってきています。

水力発電の現状と今後の展望

水力発電の現状と今後の展望

最後に、水力発電の現状や今後の展望についてご紹介していきます。

大規模なダム建設はほとんど終了

日本における大規模なダム建設はほとんど終了しており、
21世紀以降は中規模の水力発電所の建設が主流になっています。
これは、日本に大規模なダムに適した地点がそれほど多くなく、
建設可能な地点へのダム建設はすでに完了していることを示しています。

つまり、現在は中規模の貯水池やダム建設が中心となっていますが、
中規模といっても平均出力は4,500kWにのぼり、
4人家族の消費電力であれば約1,500世帯をカバーできる規模です(1世帯あたり約30Aとした場合)。

水資源に恵まれた日本は、今後も中規模の水力発電施設の建設が進んでいくと予想されます。

出力1,000kW以下の「マイクロ水力発電」も登場

水力発電を取り巻く新しい動きとして、出力が1,000kW以下の「マイクロ水力発電」をご紹介します。

マイクロ水力発電は、通常の水力発電所と比べてとても小規模なのが特徴で、
発電方法の分類としては流れ込み式(自流式)となります。

「マイクロ水力発電」は小水力発電と呼ばれ、大中の水力発電に比べて

  • 大規模な河川は必要なく、小規模な小川や農業用水などでも発電可能
  • 川の流れを利用する「流れ込み式(自流式)」なので、環境への影響がわずか
  • 自分たちで創った電気を自分たちの地域で消費可能

といったメリットがあります。

この「マイクロ水力発電」は、現時点で日本ではほとんど普及していませんが、
既に一部の河川や農業用水路、砂防堰堤、水道用水などで導入事例があります。
こうした小規模の水力発電が普及することで、今後の水力発電の状況も変わってくるかもしれません。

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。

デマンドコントロールとは?太陽光発電を活用して電気基本料金を削減

デマンドコントロールという言葉を、皆さんはご存知ですか?
デマンドコントロールが上手になれば、月々の電気基本料金の削減に役立ちます。

工場やオフィスの電気代を少しでも安くしたい方は、必ず身に着けておきたい知識のひとつ。
「意味がよくわからない」「具体策を知りたい」という方も、ぜひ参考にしてください。

太陽光発電を活用することで、さらにデマンドコントロール上手になれるかもしれません。

デマンドコントロールとは?

デマンドコントロールとは?

まず、「デマンドコントロール」の意味からおさらいしてみましょう。

デマンドとは、一般的に「需要」という意味で使われますが、
ここでは「30分間の平均使用電力」のことを指します。

業務用や高圧電力など電力会社とデマンド契約を結んでいる場合には、
30分ごとに「デマンド値」と呼ばれる使用量が計測されています。

1日あたり48回でデマンド値がチェックされており、
このデマンド値をもとに、月々の基本料金が設定されているのです。

電気代の計算方法は、「基本料金」+「電力量料金(使用電力)」。
このうち「基本料金」は、「単価×契約電力(最大デマンド)×力率割引」で計算できます。

「最大デマンド」とは、過去1年間のうち最も高いデマンド値を出した月の値を指します。

例えば、普段のデマンド値が200kWであるのに対し、
ある月のデマンド値が500kWと、いつもより300kWも上回ってしまったとします。

そうすると、この高くなった数値を元に基本料金が設定されてしまいます。
基本料金は、1年間変更されることがないので、
一度確定してしまうと節電しても大きな効果は得られません。

そこで、日頃からピークを抑えて、
できるだけ基本料金を削減するために行われるのが「デマンドコントロール」です。

(参考資料:東京電力エナジーパートナー「デマンドコントロールシステムのご紹介」)

【比較】デマンド監視とデマンドコントローラーどちらを選ぶ?

【比較】デマンド監視とデマンドコントローラーのどちらを選ぶ?

では、具体的にどうやってデマンドコントロールをするのでしょうか?
大きく2つの方法がよく挙げられます。

1つは【デマンド監視】をする方法で、
設定したデマンド値を超えないようにアラートを発するシステムを設置し、
監視者の手によって手動で制限をかける方法です。

もう1つは、【デマンドコントロールシステム】を活用する方法です。
これは、「デマンドコントローラー」と呼ばれる機器を使い、
デマンド値が規定値を超えようとしたときにアラートが発され、
コントローラーシステムが自動で空調や照明などに制限をかけてくれます。

ただし、この2つにはメリット・デメリットが存在しますので、
きちんと把握したうえで選ぶ必要があります。

【デマンド監視(手動)】のメリット・デメリット

デマンド監視のメリットは、デマンドコントローラーよりも導入価格が安いことです。

表示盤を設置すれば、誰でもオンタイムで状況が確認できるため、
従業員に対する節電の意識付けにも役立つでしょう。

ただし、監視者が必要になるため、手間が掛かる点がデメリットとして考えられます。
アラートが鳴ったときには、空調や照明などを人の手によって調整し、
コントロールしなければなりません。

人の手で制御することにより、電力会社がデマンドを計測する時間とずれが生じて、
うまくコントロールできないリスクも考えられます。

こういった手間暇が発生することを考えると、
細やかな管理ができる小規模な店舗やオフィス、工場などに向いている方法といえます。

コストに余裕があるならば、人感センサー付きの照明を取り入れるなど、
できるだけ手間の掛からない方法と組み合わせてみると、より高い効果が得られます。

【デマンドコントローラー(自動)】のメリット・デメリット

一方、デマンドコントローラーの場合、監視者がいらない分、
手間が掛からないため、大規模な施設や工場などに向いています。

大規模な施設になると、「高圧大口」「特別高圧」といった契約を電力会社と結ぶこととなり、
使用量のピークをあらかじめ決める必要があるからです。

もしこれを超過すると、契約超過金を取られることとなり、
超過分には通常よりも高い倍率の料金単価で計算されてしまいます。

そのため、30分単位できちんと計測・制御を行って、
デマンドコントロールすることが重要です。

ただし、設定値に達すると機器が突然切れて作業効率が落ちてしまったり、
商品の品質が落ちてしまったりといったリスクも考えられます。

とくに、真夏の暑い日に突然空調が止まってしまうと、
従業員からの苦情が出たり、体調不良になったりすることにもつながるでしょう。

また、予期せぬデマンド制御が掛かることで、機器の故障が増えるといったトラブルもあります。

そのため、デマンド制御をしやすい休憩室や食堂などから空調を切るように設定する、
ピークシフトを実施して室内環境の快適性を保てるようにする、といった工夫が必要です。

デマンドコントロールには太陽光発電と蓄電池が役立つ

上手にデマンドコントロールするために、太陽光発電と蓄電池を活用するのもおすすめです。

ピーク時には発電した電気を使って「ピークカット」を、
あるいは蓄電池に貯めた電気を活用して「ピークシフト」を行うことが可能です。

ピークカットとは、使用電力の多い時間帯に電力削減を行うこと。
それに対してピークシフトは、電気を使わない夜間などに蓄電池を充電し、
日中電気が必要となるときに溜まった電気を使用することで、
ピークを移行させることを指します。

前者は太陽光発電システムだけで可能ですが、
後者の場合には蓄電システムが必要となります。

先述したように、大規模なオフィスや工場などの場合には、
ピークシフトがデマンドコントロールの鍵となりますので、併用を検討してみるとよいでしょう。

いずれも初期投資費用は掛かりますが、購入する電力を減らせるので
節電面から見ても魅力の大きい方法といえます。

また、太陽光発電にはデマンドコントロール以外にもさまざまなメリットがあります。

太陽光発電にはほかにもこんなメリットが

太陽光発電といえば、「投資」のイメージを持たれる方もいるかもしれません。
しかし、売電単価も下がってきていることもあり、
自家消費、「作った電気をそのまま自社で使うこと」に向けた動きが活発となっています。

自家消費には以下のようなメリットがあります。

購入する電気を減らすことができる

太陽光発電システムを活用すれば、ピークカットが可能となります。
日中購入する電力を減らすことで、基本料金削減だけでなく、
日々の節電につながり、コスト面でのメリットもあります。

室内の温度上昇を抑える効果

屋根に太陽光パネルを載せる場合には、
室内の温度上昇を抑える効果があり、空調の効率が良くなります。

災害時の対策として役立つ

災害時や停電時にも、太陽光発電の機器が損傷を受けていない状態であれば、
機器を稼働させることができるため、BCP(事業継続計画)対策としても役立つでしょう。

東日本大震災以降、災害や異常気象に対する危機意識は高まっています。
緊急時のサービス停止を回避するためにも、蓄電池と合わせて取り入れておくのがおすすめです。

環境にやさしい設備

何より、太陽光発電はCO2をほとんど排出しない環境負荷の少ない電源ですので、
企業として環境問題に積極的に取り組んでいることをアピールできます。

工場の場合、工場立地法における「環境施設」として取り入れることも可能なため、検討してみるとよいでしょう。

太陽光発電を活用して上手にデマンドコントロールしよう

デマンドコントロールにはさまざまな方法がありますが、
それぞれメリット・デメリットがあります。
電気の基本料金をできるだけ削減するためにも、
太陽光発電設備を導入してみてはいかがでしょうか?

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。

CO2削減目標を達成するために必要な努力とは?各業界の事例まとめ

近年では、エコカーや省エネ対応の家電など、さまざまなエコ製品が販売されています。

こういった製品が増えている背景には、
「産業革命以降の気温上昇を2度未満にする」という目標のために、
世界各国がCO2削減に励んでいるという事実があります。

これは日本のエネルギー政策にも大きく関わっており、
国や個人だけでなく企業に対してもCO2削減が求められているのです。

しかし、企業としては具体的にどういった取り組みをすればCO2削減を達成できるのでしょうか。
各業界の事例を参考にして考えてみましょう。

CO2削減を目指す「パリ協定」と日本の課題

CO2削減を目指す「パリ協定」と日本の課題

そもそも、世界各国でCO2削減に励む背景として「パリ協定」があります。
パリ協定とは、2020年以降の地球温暖化の対策として、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)の開催地パリで採択された協定のことを指します。

具体的には、先進国・発展途上国を問わずすべての国が協力し、地球の気温上昇を抑えようとする、国際的な取り組みです。

パリ協定では、21世紀後半には、温室効果ガスを実質ゼロにすることが目標とされており、
加盟国は、5年ごとに削減目標を見直し、国連に報告することが義務付けられています。
取り組みが不十分であるとみなされた場合、罰則はないものの、
国際的なプレッシャーを受ける可能性があります。

2017年にアメリカがパリ協定からの離脱を宣言して
大きな話題になったことは、記憶に新しいかと思います。
地球環境よりも自国の成長を優先したトランプ大統領の行動は、
エネルギー産業や石油業界からの支持は得たものの、
アメリカは中国に次いでCO2排出量が多い国だったため、
目標達成を目指す世界にとっては大きな痛手となりました。

一方、日本はというと、2013年に、CO2排出量の削減目標を
「2020年度に、2005年度比で3.8%減」として提出しました。
ただこの数値は、先進国が排出削減を義務付けられた京都議定書の基準年(1990年)と比較した場合には
「京都議定書の基準年(1990年)比で3.1%増」だったのです。
目標が低いどころか、むしろ1990年からの増加を肯定している、と各国から批判を浴びたため、
2015年7月に再度「2030年度に、2013年度比で26%削減する」という削減目標を提出しました。

原則、一度提出した目標値は引き下げることができないため、
日本政府は、目標達成のために企業に対してCO2削減の努力を強く求めています。

(参考記事: 環境省「平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」を参考)

日本の課題と「エネルギーミックス」

なぜ2013年当初、日本が低い目標値を提示したかというと、東日本大震災により原発が稼働停止したため
火力発電に依存せざるを得ない状況だったという背景があったからです。

日本ではCO2排出量の約4割を発電所などのエネルギー転換部門が占めているため、
CO2削減目標の達成には発電方法のバランスを見直すことが重要ではありましたが、
いきなり発電方法をすべてCO2が発生しない方法に変えることは実際には難しいものです。

そこで注目されているのが「エネルギーミックス」です。

「エネルギーミックス」とは、火力や原子力、再生可能エネルギーなど、
発電のエネルギー源をバランスよく組み合わせて電源構成を最適化するというもの。
これにより、それぞれの長所・短所と、発電需給の実情を見ながら、
CO2削減と電気の安定供給を進められます。

たとえば火力発電は、燃料を海外からの輸入に頼る必要があるため発電コストが不安定という面があります。
原子力発電は、CO2を発生させないというメリットがある反面、
万が一の事故への不安から、震災以降はとくに稼働停止を求める声が強まっています。
再生可能エネルギーによる発電は、CO2を発生させないといったメリットもあり注目されていますが、
発電設備の設置導入コストがまだまだ高く、安定性についても保証しづらいものです。

このように、発電方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、
それぞれのエネルギー源をバランスよく構成していくことで、
CO2の削減と、安定的な電力供給を同時に進める、というのが日本政府の方針です。

特に、当時普及が伸び悩んでいた再生可能エネルギーに関しては、
より普及を促進するために、固定価格買取制度(FIT制度)が設けられました。

投資価値のある企業になるためにも、環境への配慮が重要

パリ協定によって、世界各国で環境に配慮する企業活動が行われていることから、
投資家のあいだでも「投資価値のある企業」の選び方に変化が生まれています。
それが「ESG投資」です。

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を
重要視して行う投資のことで、その配慮とは、環境保護活動や地球温暖化対策などを指します。
投資家のあいだではこうした環境配慮に積極的に取り組む企業が、
「投資価値のある企業」として注目され始めているのです。

ですから、CO2削減をはじめとする環境配慮は、
パリ協定の目標達成のためだけに取り組む問題ではなく、企業の価値向上につながってきます。
環境配慮を無視した経営を続けてしまえば、投資家たちの評価が得られず
「投資価値の薄い企業」とみられてしまうため、
長期的な観点で言えば、環境に配慮することが「企業の強み・価値」の向上となるのです。

どのような活動がCO2削減につながるのか

ここまで、国としてのCO2削減の方針の話を書きましたが、
では具体的にどのような企業活動が、CO2削減につながるのでしょうか?

その取り組みのひとつとして、植林を行っている企業があります。
植林はCO2削減に役立つだけでなく、減少している森の保全や、
その木の実をエサにする動物を守ることにもつながります。

他にも、再生可能エネルギーの使用や省エネ対策など、さまざまな方法が挙げられます。
各業界では具体的にどういった方法でCO2を削減しているのか、事例をご紹介します。

各業界の取り組み事例を紹介!

太陽光発電の導入

プリンターやミシンといった機械の製造・販売を行うブラザー販売株式会社を運営するブラザーグループでは、
工場に太陽光発電システムを導入することにより、CO2削減に努めています。

大規模な施設のため、100%再生可能エネルギーとするのは難しいですが、
工場の電力使用量のうち数%を自家発電で賄っています。
また、発電設備が設けられないエリアや施設では、
後述の「再生可能エネルギーにより発電された電気」を購入することで、CO2削減となるよう工夫しています。
(※ブラザーグループの取り組みは、当社の施工・サービスによるものではございません)

(参考サイト:ブラザーグループ「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」を策定)

再生可能エネルギー由来の電気の購入・利用

株式会社エコスタイルが行っているのが、政府の指針同様、再生可能エネルギーに注目した活動です。
エコスタイルでは、他の企業に向けて「クリーンな電気を提供する」というソリューションを提案しています。

太陽光発電設備を設けるには初期投資費用や維持費が必要ですが、それらの資金についてはエコスタイル提携の金融機関から融資を受けることができます。

そのかわり、電力購入の契約をした企業は、その発電設備から得た電気の料金を支払うことで、
「再生可能エネルギー由来の電気を使っている」とみなしてもらえるものです。

これは「PPAモデル(電力購入契約モデル)」と呼ばれ、近年注目されている導入方法です。

物流の見直しも重要

物流を見直すことも、CO2削減と大いに関係しています。
ブラザー販売株式会社は、環境負荷の少ない物流を目指し、
配送ルートや便数を随時見直し、物流の効率化を図っています。
こういった試みによるCO2削減効果は、出荷重量あたり38%となり、高い成果を上げています。

大口の顧客については、トラックを使わず鉄道で輸送することで、
2017年には約18トンものCO2削減を行っており、
物流を見直すだけでも大きく貢献できるのがわかります。

(参考記事: ブラザーグループ:「ブラザーグループの環境活動レポート」CO2排出削減活動 の広告を参考)

自然保護活動への参加

自然保護活動は、持続可能な社会のために重要な活動です。
先ほど挙げた植林に関しても、特に、建築業や製造業など
木を材料として利用する企業にとっては、大切な活動ではないでしょうか。

積水化学グループ」は、こういった自然保護活動に力を入れており、
グループ社員が地域の森で植樹をするなど、地域ぐるみの取り組みを進めています。
自然豊かなエリアにある工場では、工場立地法の規定よりも大きな緑地を設けたり、
ビオトープを作ったりといった工夫もしています。

さらに、社員や地域の方を招いて自然学校を開き、環境保護の大切さを広めるなど、
地域全体でCO2削減に努められるような取り組みが行われています。

(参考記事:積水化学工業株式会社「地域の自然活動」より)

身近な取り組みからはじめてみよう!

CO2削減に向けた取り組みは、企業によってさまざまです。
自社が消費している材料に目を向けてみるのもひとつですし、
太陽光発電のような大規模設備を導入するという方法もあります。

「CO2削減なんて自社では難しい」と感じるかもしれませんが、
大規模設備が導入できる面積がなければ、再生可能エネルギーを購入するのもひとつの手ですし、
規模の大きな投資が難しい場合には、省エネ対策など身近なところからから始めることは可能です。

出来る範囲から取り組んでいくことで、環境に配慮しながら企業の価値も向上させていけるはずです。

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。

CO2削減量を売買!?J-クレジット制度のメリットや参加方法

「J-クレジット制度」をご存知でしょうか?
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、CO2などの温室効果ガスの削減量や
吸収量を売買できる画期的な制度です。

この記事では、J-クレジットのメリットや活用事例、参加方法などをご紹介していきます。

そもそもJ-クレジット制度ってなに?

J-クレジット制度とは、太陽光発電設備や省エネ設備の導入、
適切な森林管理などによって削減された温室効果ガスの「削減量」や「吸収量」を、
J-クレジット」として国が認証する制度です。

認証されたJ-クレジットは、大企業や中小企業、地方自治体などに売却することができます。

(参考資料:J-クレジット制度「J-クレジット制度について」)

J-クレジット創出者とは?

「J-クレジット創出者」とは、J-クレジットを生み出す中小企業、
農業者、森林所有者、地方自治体などを指します。

J-クレジットを生み出すには、具体的に以下のような方法があります。

  • LED照明など、省エネ性能にすぐれた設備の導入
  • 太陽光発電設備など、再生可能エネルギーの導入

J-クレジット購入者とは?

「J-クレジット購入者」とは、J-クレジット創出者が生み出したJ-クレジットを購入する
大企業や中小企業、地方自治体などを指します。

J-クレジット創出者のメリット

J-クレジット創出者のメリット

J-クレジット創出者には、以下の5つのメリットが存在します。

J-クレジットの売却益を得られる

J-クレジット創出者のメリットとしてまず挙げられるのは、
J-クレジットを売却することで、売却益を得られるということでしょう。

売却益は、J-クレジット創出のための設備投資の一部に充てるなどして、
投資費用の早期回収や、さらなる設備投資に繋げることができます。

ランニングコストの削減が可能

J-クレジットを創出するために、省エネ設備や自家消費型太陽光発電などの太陽光発電設備などを設置する場合、
これらの設備によって、CO2などの温室効果ガスだけでなく、
電気代などのエネルギーコストも削減することも可能です

また、太陽光発電といった再生可能エネルギーの活用によって生み出される
クリーンエネルギーを利用することにより、企業の環境経営にも貢献することができます。

地球温暖化対策に積極的な企業だとPRできる

太陽光発電設備の導入や森林経営などを行って温室効果ガスを削減し、
J-クレジット創出者になることで、地球温暖化対策に積極的な企業であることを
一般消費者や取引先企業などにPRすることができます。

また、中小企業などがCSR(企業の社会的責任)活動へ参加する後押しにもなるでしょう。

J-クレジット売却を通じてネットワークが広がる

創出したJ-クレジットの売買を通じて、新たなネットワークが広がる可能性があります。

特にJ-クレジットの売買では、地産地消を意識した企業や、環境活動を意識した企業など、
地元に根付く、あるいは環境に対する配慮を意識している企業との
ネットワーク構築につながりやすいと言えるでしょう。

組織内の省エネ意識が高まる

J-クレジット制度を活用することで、組織内の省エネ意識を高める効果も期待できます。

具体的には、J-クレジット制度への参加により省エネの取り組みが具体的な数字として
確認することができるため、社員一人ひとりのやる気につながっていくことが期待できます。

J-クレジット購入者のメリット

J-クレジット購入者のメリット

J-クレジット購入者のメリットとしては、以下の4つが挙げられます。

環境貢献企業としてのPR効果が期待できる

近年は企業における環境活動に注目が集まっています。
CO2などの温室効果ガスの削減目標を掲げている企業もありますが、
自社の努力だけではどうしても目標に追いつかない場合もあります。

そのような場合にJ-クレジットを購入することで、
しっかりと温室効果ガスの削減を行っているという実績を得ることができます。

これにより、環境貢献企業として一般消費者や取引先へPRができるのです。

温対法や省エネ法に活用できる

J-クレジットは、温対法(地球温暖化対策推進法)や、
省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)の報告などにも活用できます。

温対法や省エネ法以外にも、各種企業評価調査などにおいてJ-クレジットの購入をPRすることで、
企業評価の向上に役立てることができます

カーボン・オフセットによるサービスの差別化

J-クレジットは、企業の「カーボン・オフセット」も後押しします。

カーボン・オフセットとは、あくまでも排出量を抑えるという前提の上に、
ある場所で排出したCO2などの温室効果ガスを、別の場所で吸収・削減しようという考え方です。

J-クレジットを、カーボン・オフセットに利用することにより、
ブランディングなどを通じてサービスの差別化をはかることができます。

J-クレジット購入を通じてネットワークが広がる

J-クレジットをJ-クレジット創出者から購入する際の取引を通じて、
環境や省エネへの意識が高い企業や地方自治体と新たなネットワークを構築することができます。

場合によっては、J-クレジットの取引がきかっけで、
新たなビジネスチャンスが生まれる可能性も十分にあります。

J-クレジット制度への参加方法

ここでは、J-クレジット制度への参加方法を解説していきます。
Jクレジット制度への参加は、以下の7つのステップで行われます。

  1. 温室効果ガスの排出削減事業または吸収事業を実施、もしくは計画する
  2. 国が委託している支援機関に無料相談する
  3. 申請書作成に対するサポートや、
    審査時・検証時の費用などの支援内容を確認する
  4. 温室効果ガスの排出削減・吸収事業を具体的に記載した
    「プロジェクト計画書」を作成し、登録申請を行う
  5. プロジェクト計画に基づき、モニタリング
    (温室効果ガスの削減量等の計測)を実施する
  6. モニタリングの結果をまとめた「モニタリング報告書」を作成し、
    J-クレジット制度の認証申請を行う
  7. 認証されたJ-クレジットを、J-クレジット購入者に売却するなどして活用する

(参考リンク:J-クレジット制度「J-クレジット制度について」)

J-クレジット制度の対象となる事業の一例

  • 太陽光発電設備の導入
  • 水力発電設備の導入
  • 風力発電設備の導入
  • バイオマスボイラーの導入
  • ヒートポンプの導入
  • 空調設備の導入
  • 照明設備の導入
  • コージェネレーションの導入
  • ポンプ・ファンの導入
  • 定期的かつ計画的な間伐など、適切な森林管理の実施
    (参考資料:J-クレジット「J-クレジット参加方法」)

J-クレジット制度の活用事例

J-クレジット制度の活用事例

ここでは、実際にJ-クレジット制度がどのように活用されているか、
具体的な事例を交えてご紹介していきます。

株式会社エコスタイルのJ-クレジット創出事例

株式会社エコスタイルでは、自家消費を目的とした太陽光発電「太陽でんき®」を設置することで
CO2排出量を削減し、その削減量を「エコスタイルJクレジットクラブ」として取りまとめることで、
J-クレジットを創出しています。
※「エコスタイルJクレジットクラブ」への加入手続きをされた企業様のJ-クレジットを活用します

「エコスタイルJクレジットクラブ」の活用実績

「エコスタイルJクレジットクラブ」によって創出されたJ-クレジットは、
以下のような地域・環境貢献活動に活用されています。

  • 地域の再生エネルギー発電所の建設
  • 地域の太陽光発電所にポータブル蓄電池を設置することによる減災活動
  • 小学校や中学校における環境教育の実施

CO2削減量を束ねて大きな「エコの輪」に

ひとつの企業や一人の消費者だけでは、CO2削減量に限りがありますが、
それらをひとつに束ねることで、大きな「エコの輪」にしていくことができます。
株式会社エコスタイルの「エコスタイルJクレジットクラブ」には、そんな願いが込められています。

エコスタイルJクレジットクラブ

その他のJ-クレジット創出者

株式会社エコスタイルの他にも、たとえば以下のような企業や、
自治体、団体がJ-クレジットを創出しています。

  • NPO法人ちがさき自然エネルギーネットワーク
  • トーラス株式会社
  • 株式会社サンジュニア
  • 兵庫県神戸市
  • 株式会社NTTスマイルエナジー
  • 株式会社 大林組
  • 沖縄綿久寝具株式会社

公益財団法人日本野球連盟のJ-クレジット購入事例

日本野球連盟は、2018年7月13日~7月24日に開催された「第89回都市対抗野球大会」において、
開催に伴い発生する温室効果ガスを、J-クレジットを購入することによりカーボン・オフセットしました。

カーボン・オフセットによって、大会期間中の運営や観客の移動などに伴って排出される
温室効果ガスを埋め合わせるというこの取り組みは、2016年の第87回大会から実施されています。

J-クレジットなどの活用によりカーボン・オフセットを行うことで、
日本野球連盟は「環境に配慮しながら大会運営を行っている団体」であることアピールする結果となりました。

(参考資料:J-クレジット制度「第89回 都市対抗野球大会のカーボン・オフセット」)

その他のJ-クレジット購入者

日本野球連盟以外にも、J-クレジットを購入して
カーボン・オフセットなどに利用している企業・団体はたくさんあります。

以下、その中の一部の企業・団体をご紹介します。

  • 株式会社アールエイチ企画
  • J-クレジット東北地域推進協議会
  • 楽天株式会社(楽天エナジー)
  • 出雲市
  • 大樹町/雪印メグミルク
  • 佐渡トキ野生復帰10周年記念式典実行委員会
  • 広島本通商店街振興組合

まとめ

J-クレジット制度は、温室効果ガスの削減量を取引できる画期的な制度です。
登録申請をしてJ-クレジット創出者になれば、主に省エネ機器の導入や、
太陽光発電などの再生エネルギー設備の導入、適切な森林管理などによって
“環境価値”として取引できる「J-クレジット」を生み出すことができます

現在、株式会社エコスタイルをはじめとした様々な企業・団体がJ-クレジットを創出しています。

一方でJ-クレジット購入者は、J-クレジットを購入することで、企業経営上のCO2削減に繋げる、
カーボン・オフセットに役立てるなど、さまざまな用途で活用できます。
RE100達成のための手段のひとつとして、J-クレジットを求める大手企業もあります

今後、J-クレジット創出者や購入者の数が増えることで、
J-クレジットの注目の場はますます広がっていくでしょう。

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。

排出権取引とは?仕組みやメリット・問題点を解説!

排出権取引制度をご存じですか?
「キャップ・アンド・トレード」とも呼ばれる排出権取引制度は、CO2を排出する「排出枠」を設定し、その排出枠を取引する制度で、従来の自国・自社努力のみのCO2削減政策よりも効率が良いと一般的にはいわれています。
この記事では、排出権取引制度について、

  • 排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)の概要
  • 排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)の仕組みと流れ
  • 排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)のメリット
  • 排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)の問題点

などについて、分かりやすくご紹介していきます。

排出権取引とは?

「カーボンプライシング(Carbon Pricing)」の施策として、排出権取引と、CO2(温室効果ガス)排出量に応じて課税する炭素税があります。なお、この記事では、排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)に絞って解説していきます。
排出権取引は、個別の企業や国に対して温室効果ガスの排出枠(排出を許される量、キャップ)を割り当てるもので、各企業・国はその排出枠を超えないように、排出するCO2の量を抑える必要があります。
そして、割り当てられた排出量を超えそうな企業や事業所は、別の企業・事業所から排出枠の取引(トレード)を行えます。
もともとはアメリカの発電所において発生する二酸化硫黄を削減する際に用いられた制度で、その際に成果を上げたことで二酸化炭素の排出においても用いられるようになりました。

背景は地球温暖化の防止

排出権取引が行われている背景としては、地球温暖化の対策・防止があります。排出権取引があることにより、企業は自社努力で二酸化炭素排出量の削減を行うか、排出枠を購入するかという選択を行えるようになります。
こうした選択肢の増加によって、自社努力によるCO2の削減が難しい企業においても、貢献しやすくなるといった効果が期待されています。

排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)の仕組みと流れ

ここでは、排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)の仕組みについて、詳しく解説していきます。

STEP1:CO2削減量の決定と排出枠の発行

第一のステップとして、基準となる年からどの程度CO2を削減するのかという「削減量」を決めます。
たとえば、2020年の排出枠を決める場合、「2015年を基準としてCO2を20%削減する」という目標を立てた場合、その国や部門全体には2015年のCO2排出量の80%分が「排出枠」として割り当てられます。

STEP2:各企業への排出枠の分配

国・部門全体の排出枠が発行されたあとは、さらにその下の企業や事業所などへ排出枠を分配していきます。
排出枠の分配方法は、大きく分けて「グランドファザリング方式」、「ベンチマーク方式」、「オークション方式」の3つが存在しています。

  • グランドファザリング方式

グランドファザリング方式は、企業や事業所における過去のCO2排出量を基準として、無償で排出枠を分配する方法です。

  • ベンチマーク方式

ベンチマーク方式は、その企業・事業所の生産物や技術に着目し決定される「理想的な標準の排出量」をもとに、排出枠を分配する方法です。

  • オークション方式

オークション方式は、各企業・事業所が排出枠をオークション(入札)によって購入する方法です。グランドファザリング方式やベンチマーク方式が無償で排出枠を分配するのに対し、オークション方式だけが有償での分配です。
(参考資料:環境省「排出枠の設定方法(pdf)」)

STEP3:排出枠の取引

排出枠の分配が完了すると、各企業や事業所は、割り当てられた排出枠内に収まるように努めます。

しかし、割り当てられた排出枠内にCO2排出量を収めることができる企業ばかりではありません。なかには当然、分配された排出枠を超えてしまう企業も出てきます。
ここからが排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)の本領発揮となります。割り当てられた二酸化炭素(温室効果ガス)の排出枠を超えてしまいそうな企業は、二酸化炭素を十分に削減して排出枠に余裕がある企業から、排出枠を購入することが可能です。このとき、排出枠を超えてしまいそうな企業は「排出枠の購入」の他にも、「自社努力によるCO2削減」という道も残されています。
企業が「排出枠の購入」と「自社努力の削減」どちらを選ぶかは、その企業判断基準によって異なります。

STEP4:排出枠・排出量の確認(マッチング)

最後のステップとして、各企業・事業所の排出枠と排出量が合致しているかどうかの確認が行われます。この確認作業は「マッチング」と呼ばれます。

このマッチングにおいて、定められた排出枠内に二酸化炭素(温室効果ガス)の排出量を収めている企業・事業所は、排出権取引のルールを守ったことになります。
そして、配布された排出枠をオーバーしてしまった企業については、罰則が科せられます。
以上が、排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)の仕組みと流れです。

排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)のメリット

排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)のメリットには、主に以下の3つが存在しています。

達成される目標が明確

地球温暖化対策という視点からみたときの、排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)のメリットは、達成される目標が明確という点です。

どういうことかというと、上記の仕組みと流れでも解説した通り、排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)では削減目標として設定した排出量に対し、排出枠を設けます。
そのため、各企業が分配された排出枠を超えることなく、ルール通りに履行する限り、最初に設定した二酸化炭素(温室効果ガス)の削減目標は達成することになります。

たとえば基準年に対して「90%」という削減目標をもとに排出枠が分配された場合、割り当てられたすべての企業・事業所が排出枠内に排出量を収めれば、
基準年に対する「90%」というCO2削減目標は最低でもクリアできます。

温室効果ガスの削減費用を最小化できる

排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)は、温室効果ガスの削減費用を最小化するというメリットもあります。排出枠をもとに二酸化炭素の削減を行う企業は、

  • 自社努力で削減する
  • 排出枠を他企業から購入する

という2つの選択肢が用意されています。
企業の業種や形態によって事情が異なるため、自社努力による削減のほうが低コストで済む場合もありますし、その反対のケースもあるでしょう。
このように、各企業においてより低コストとなる削減方法を選択できるので、全体としての温室効果ガス削減費用も最小化することが可能となります。

企業側のCO2削減手段の増加

上記の話と重なる部分がありますが、企業にとってもCO2を削減する手段が増えます。
排出権取引は、環境政策のなかでは環境税などと同じ経済的手法に属しています。
この経済的手法は、政府が二酸化炭素の排出量を直接規制する政策手法と比較すると、削減を行う側の柔軟性が高く、より効率的であるといわれています。

排出権取引の問題点

排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)には、しばしば問題点も指摘されています。ここでは、排出権取引制度の問題点についてみていきましょう。

カーボン・リーケージの問題(CO2漏出問題)

カーボン・リーケージとは、国際競争が激しい産業の企業が、排出権取引制度などの温室効果ガス排出規制が緩い国へ脱出・移転しまうことを指します。

このカーボン・リーケージが実際に行われてしまうと、かえって地球全体のCO2排出量が増えてしまう場合もあるのです。
EUでは既に2009年にカーボン・リーケージにおける対策を話し合っており、カーボン・リーケージのリスクが高い164の産業部門及び小部門の企業については、他の産業部門よりも温室効果ガスの排出枠を多めに配分することが決定されています。
(参考資料:新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO海外レポート 」)

国や地域ごとに異なった環境政策を取っている限りは、こうしたカーボン・リーケージなどのリスクは無くならないでしょう。

多くの業界が「原単位」目標を主張している

日本国内においては、多くの業界が「総量規制」ではなく「原単位」でのCO2削減目標を主張していることも問題の1つとされています。

「原単位」とは、簡単にいうと総生産量ではなく、1つあたりの生産品に対するCO2削減目標のことを指します。

ここで問題となるのは、「原単位(製品1つあたり)」でCO2を削減したとしても、大量に生産すれば総量としてのCO2排出量は多くなってしまうということです。
現在、経団連が定める「自主行動計画」では、原単位での削減目標も認めているので、企業は「総量規制」と「原単位」どちらでも選べるようになっています。

つまり、「原単位」を選ぶ企業や業界が増えると、排出権取引の「二酸化炭素排出量を減らす」という本来の目的が達成されなくなってしまう可能性があるのです。

排出枠の設定が困難

排出枠の設定が困難であることも、排出権取引の問題点としてあります。

排出権取引の排出枠を厳しく設定した場合、各国・各企業は二酸化炭素の削減努力に苦労することになり、また排出量を下回る国・企業が減少するため余剰排出枠の費用も上がります(二酸化炭素の排出にかかる費用が高騰する)。

反対に排出枠の設定を甘くした場合、それなりの自社努力で削減目標をクリアする企業や国が続出し、売りに出される排出枠の数が多くなって値下がりします。
これにより、まったくCO2削減の自社努力をせず、ただ排出枠だけ購入したほうが安上がりといった事態も発生してしまいます。
こういったことから、適切な排出枠の設定は非常に難しい問題になっているのです。

排出権取引の実施国で課題が浮き彫りに

上記で挙げたような問題は、既に排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)を実施している国々によって明らかになってきた問題でもあります。
次の項目では、排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)を実際に導入している世界の国々の事例を見ていきましょう。

世界各国の排出権取引の導入事例

ここでは、実際に排出権取引制度を導入している世界の国々の事例を紹介していきます。

EU(欧州連合)

EU(欧州連合)では、2005年からこれまで3期間にわたり、EU域内で排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)を開始しました。
ここで排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)の対象となったのは、EU域内である程度の規模を超えて二酸化炭素を排出している工場や事業所、施設です。
EU(欧州連合)では、以下の期間に排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)を実施しました。

  • 第1期:2005年~2007年
  • 第2期:2008年~2012年
  • 第3期:2013年~2020年
  • 第4期:2021年~

排出権取引制度をいち早く実行してきたEUですが、経済危機の影響や制度そのものの不備などから、目標とする削減量に対し排出枠が余ってしまうなどの問題が発生しました。
その結果、排出権取引制度による十分な温室効果ガス削減効果を得られなかったとして批判を浴びる結果となりました。
しかしながら、現在は少しずつではありますが、改善に向けて進んでいる状況です。
(参考記事:WWFジャパン「温室効果ガス排出量取引」)

アメリカ(一部の州)

世界最大のCO2排出国であるアメリカでは、2007~2010年にかけてアメリカ全土における排出権取引制度の導入が検討・議論されましたが、結局導入は見送られました。

しかし、州単位で見てみると、排出権取引制度を導入している州はいくつか存在しています。たとえばカリフォルニア州では、2012年からEU(欧州連合)に近い形で排出権取引制度が導入されています。
また、それよりも古い2009年には、アメリカ東部の7州が発電所のCO2排出量削減を目的とした排出権取引制度「RGGI(Regional Greenhouse Gas Initiative)」を発足しています。
このRGGIへ参加している州は、2017年の時点では9州まで増えています。
(参考記事:WWFジャパン「温室効果ガス排出量取引」)

ニュージーランド

ニュージーランドにおいては、2008年に森林と農業部門を対象とした独自の排出権取引制度が開始されています。
ニュージーランド政府は、排出する二酸化炭素の限度量を設ける「炭素予算」を2030年に向けて定めているのですが、その「炭素予算」を達成するためにも、排出権取引制度の効果的な活用が期待されています。
(参考記事:WWFジャパン「温室効果ガス排出量取引」)

中国

中国では、早ければ2020年にも中国全土を対象とした排出権取引制度を開始することを、2017年12月に発表しています。
ここで対象となるのは主に火力発電所で、年間CO2排出量が2万6000トン以上の施設(約1,700カ所)が対象となります。
(参考資料:日本経済新聞「中国、20年にも排出権取引制度 自家火力も対象、改善急務」)

韓国

韓国では2015年から排出権取引制度が開始され、第1期(2015~2017年)では総排出量の約7割をカバーしています。
(参考記事:WWFジャパン「温室効果ガス排出量取引」)

温室効果ガスの削減に向けて求められる政策

紹介してきた排出権取引制度は、CO2排出量を「排出枠」で管理し、その排出枠を売買可能にすることで、より効率的に温室効果ガス削減を達成するというものでした。

この制度自体はさまざまな国で導入されており一定の成果を挙げているのですが、日本においては導入が進んでおらず、また「原単位」ごとの削減を主張する業界が多いなどの問題もあります。
こうしたなか、WWF(世界自然保護基金)では、脱炭素社会に向けた「ポリシーミックス」を提言しています。

WWFが提言する「ポリシーミックス」とは?

WWFが提言する「ポリシーミックス」は、排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)だけではなく、その他のさまざまな政策と組み合わせることで、より脱炭素社会に向けて前進していこうというものです。
ここで言うその他の政策というのは、

  • CO2排出量に応じて課税する「炭素税」
  • 中小事業者がエネルギー効率に優れた設備を導入するなどして削減したCO2排出量を他社へ売却する制度

などが当てはまります。 (参考資料:WWFジャパン「温室効果ガス排出権取引/入門編」)
日本でも「グリーン電力証書」、「J-クレジット」、「非化石証書」といったCO2を排出しない電気を取引する制度はありますが、政府が主体となってさらに進める必要があるでしょう。

まとめ

この記事では、排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード)について、仕組みやメリット、問題点を紹介してきました。

国や企業・施設などに対し「排出枠(キャップ)」を設け、その排出枠を「取引(トレード)」する排出権取引制度は、目標とするCO2削減量をもとに排出枠が設定されるため、ルール通りに行われればCO2排出量を減らすことにつながる仕組みとなっています。
しかしながら、排出枠の価格が暴落・高騰してしまうことから、排出枠の締め付けのレベルを決めるのが難しく、課題となっています。

CO2削減のために日本においては、既に排出権取引制度を導入しているEU(欧州連合)やアメリカのカリフォルニア州の例を参考に、「炭素税」などと組み合わせた「ポリシーミックス」による政策推進が、世界から求められています。

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。