自家消費型太陽光発電とは?メリット・デメリットや国内事例を紹介
自家消費型太陽光発電とは、太陽光発電システムで発電した電力を自社施設で直接使用する設置形態です。
「そもそも自家消費型太陽光発電とはなに?投資や売電目的の太陽光発電とどう違うの?」
「自家消費型太陽光発電を導入した場合、設置した企業にどんなメリットがあるのか知りたい・・・」
自家消費型太陽光発電について、こんな疑問があるのではないでしょうか。
この記事では、
- 自家消費型太陽光発電の概要
- 自家消費型太陽光発電のメリット・デメリット
- 自家消費型太陽光発電の国内事例
などについて解説します。
自家消費型太陽光発電とは
はじめに、自家消費型太陽光発電の基本について解説していきます。
自家消費型太陽光発電とは、発電した電気を自社で使用すること
自家消費型太陽光発電とは、発電した電気を自社の施設で消費する太陽光発電のことを指します。
従来の太陽光発電では、固定価格買取制度を利用して発電した電気を全量売電し、収益を得ることが主な目的とされていました。
太陽光発電システムの施工コストが普及当初よりも安価になり、また固定価格買取制度による売電単価の見直しで売電のメリットが薄まったことから、自家消費型太陽光発電の設置に注目が集まっています。
自家消費型太陽光発電には「余剰売電」と「全量自家消費」の2種類がある
自家消費型太陽光発電は、発電した電気の売電の有無によって「余剰売電」と「全量自家消費」の2種類に分けられます。
「余剰売電」とは、太陽光発電でつくった電気を自社施設で消費し、使いきれずに余った電気を電力会社に売電する方式です。
電気使用量が下がる休業日に発電した電力を売電するようなケースが想定されます。
「余剰売電」を選択した場合、全量売電ほどではないものの、売電量に応じた売電収入を得ることができます。
「全量自家消費」とは、太陽光発電でつくった電気をすべて自社のなかで消費する方式です。
稼働時間が多く、電力消費量が多い施設などに適しています。
売電収入を得ることはできませんが、電気代の削減や、再生可能エネルギーの使用比率を高めることで環境への取り組みとして評価されるといったメリットが期待できます。
投資用太陽光発電とは何が違うのか
投資用太陽光発電とは、固定価格買取制度を活用し、発電した電力を電力会社に売電することを目的とした設置形態です。
太陽光発電システムの設置後も、20年間にわたって売電単価が保証されます。
自家消費型太陽光発電が、発電した電力を自社施設で使用することを目的としているのに対し、
投資用太陽光発電は、発電した電力をすべて売電し、自家消費しない点が、大きな違いとなります。
自家消費型太陽光発電のメリット
ここからは、法人施設に自家消費型太陽光発電を導入するメリットについて詳しくご紹介していきます。
電気料金の削減
自家消費型太陽光発電の最大のメリットは、電気料金が削減できることです。
自社施設で使用する電気を太陽光発電でつくった電気でまかなうことで、電力会社から購入する電気量を削減します。
その結果、月々の電気料金の削減が期待できます。
また、電気量料金にくわえて「基本料金」も下げられる場合もあります。
電気料金の基本料金の計算基準には「最大デマンド値(過去1年間の最大需要電力の中で最も大きい値)」が使用されます。
消費電力量を抑えることで「最大デマンド値」を抑え、基本料金を下げることが期待できます。
企業の停電対策(BCP対策)にも有効
自家消費型太陽光発電を導入する際に、「自立運転機能」がついたパワーコンディショナを設置することで、停電が発生した場合でも日中に電力を使用できる場合があります。パワーコンディショナとは、太陽光発電システムで発電した直流の電気を、施設内で利用可能な交流の電気に変換する装置です。
また、蓄電池を導入することで、夜間や天候が悪く発電効率が落ちる場合でも、蓄電池にためてある電気を使用できる場合があります。
もっとも、太陽光発電システムの発電量のみで、停電時の電力を全てバックアップすることは難しいため、優先的に電気を使用したい設備を検討しながら設置する必要があります。
以上の観点から、企業のBCP対策としても、自家消費型太陽光発電は注目を集めています。
余剰売電なら売電収入も得られる
自家消費型太陽光発電であっても、自社で使いきれなかった電気を、FIT(固定価格買取制度)を利用して余剰売電することで、売電収入を得られる場合があります。
発電した電気をすべて売電にまわす全量売電よりも売電収入は少なくなりますが、発電した電力を無駄にすることなく、電気代の削減+売電収入という2つのメリットを同時に得られる場合があります。
節税対策に利用できる場合も
中小企業が自家消費型太陽光発電を導入する場合、「中小企業投資促進税制」や「中小企業経営強化税制」を利用することで、即時償却や税額控除などの優遇税制を受けられる場合があります。
即時償却とは、設備投資の費用を、初年度にすべて経費として計上できる制度です。
導入初年度の利益を押し下げることで、本来支払わなければならない法人税の削減が期待できます。
※中小企業経営強化税制の適用には条件があります。節税となるのは即時償却した当期のみで、耐用年数期間のトータルの税額が減少する訳ではありません。
即時償却を見込んだ自家消費型太陽光発電の導入を検討されていましたら、お気軽にお問い合わせください。
補助金が活用できる場合がある
また、自家消費型太陽光発電の導入に際して、国や地方自治体からの補助金を申請し、交付が受けられる場合もあります。
2020年9月16日時点で受付を行っている補助金制度は、
などがあります。
参考ページ:企業補助金関連情報
※補助金を受け取るためには、制度ごとの所定の条件を満たす必要があります。
※自家消費型太陽光発電は、工事や各種手続きをすべて含めると半年~1年以上もかかるケースもあります。また、実際に工事が完了し、稼働していないと申請できない場合もございますので、期限には余裕を持っていただきますようお願い致します。
環境経営の推進に活用できる
売電を目的としない自家消費型太陽光発電では、再生可能エネルギーを自社で発電できる点がメリットとなります。
「SDGs」「RE100」などが日本国内においても注目されているなか、再生可能エネルギーによる脱炭素化への取り組みは、「CSR活動」として企業の価値を高めるでしょう。
また、企業が環境や社会へ配慮しているかどうかを投資基準とする「ESG投資」も広がりを見せています。
自社施設の消費電力における再生可能エネルギー比率を高め、環境経営を推進することができます。
工場立地法・省エネ法などの法令への対策
工場立地法や省エネ法などの法令の基準の達成を目指す場合でも、自家消費型太陽光発電は有効です。
たとえば工場立地法であれば、自家消費型太陽光発電は「環境施設」としてカウントされます。
また、施設のエネルギー使用量を制限する省エネ法においても、電力会社からの買電量を減らすことができるので、省エネ対策になります。
自家消費型太陽光発電のデメリット
ここからは、自家消費型太陽光発電のデメリットについて解説していきます。
施設の稼働状況・稼働時間で節電効果が変わる
自家消費型太陽光発電による節電効果は、施設の稼働状況によって異なります。
自家消費型太陽光発電は、太陽が出ている日中に発電し、施設に電力を供給します。
日中の電力使用量が多い施設のほうが、効率よく電力を使用できます。
また、発電した電力を全量自家消費する場合、施設の休業日は発電した電力を活かすことができません。
人員を2交代・3交代するような稼働日数が多い施設ほど、太陽光発電システムで発電した電力を、フルに消費することができます。
導入コストが高額
自家消費型太陽光発電を導入する際のネックとなるのが、高額な設置費用です。
ただし、導入に必要なパネルの費用は年々低下傾向にあります。
加えて、前述の補助金や節税制度を適切に活用することで、初期費用を抑えて設置できる場合もあります。
また、初期投資0円(※)にて、自家消費型太陽光発電を設置できる「PPAモデル」と呼ばれる設置方法もあります。
PPAモデルは第三者所有モデルとも呼ばれており、施設の所有者はPPA事業者に屋根を提供し、PPA事業者が太陽光発電を設置します。
施設の所有者は、PPA事業者が発電した電力を安価に購入し、電気料金を削減することができます。
施設の所有者の立場では、太陽光発電の高額な設置費用が不要となり、なおかつ資産としての所有やメンテナンスを避けることができる点がメリットとなります。
※ PPAは個別に審査があり、契約期間や電気利用料は契約で取り決めます。また、契約期間満了後の設備の取り扱いに関しては契約の内容により異なり、設備を自ら保有する場合には追加費用が発生する場合もあります。
※オフバランス化につきましては監査法人等、専門家と十分協議いただきますようお願いいたします。
メンテナンス・維持費がかかる
自家消費型太陽光発電を導入した後も、メンテナンス費用・維持費が必要になります。
具体的には、パワーコンディショナの交換費用、定期点検費用、清掃費用などがあてはまります。
太陽光発電のランニングコスト(メンテナンス費・維持費)については、詳しくは以下の記事をご覧ください。
なぜ今「自家消費型太陽光発電」なのか
企業が自家消費型太陽光発電に注目しているのは、電気代の削減に役立つからだけではありません。このほかにも、太陽光発電をめぐる情勢の変化が絡んでいます。
「FIT法」改正により方向転換を図る企業の拡大
FIT法は、再生可能エネルギーの普及を目標として制定されました。わかりやすくいえば固定価格買取制度のことで、開始当初は買取価格が40円(税抜)/kW(10kW以上)と高かったことから、太陽光発電投資に乗り出した企業も多くありました。しかし、このFIT法をきっかけに太陽光発電を開始する方が急増し、のちに紹介する「九電ショック」のような事象も発生したのです。そのため、2017年にはFIT法は改正を余儀なくされ、単価の大幅な見直しも図られました。
たとえば、2,000kWを超える大型の事業用太陽光発電においては、入札制度が導入されることとなり、10kW以上2,000kW未満の発電設備も21円(税抜)/kWhへと引き下げられました。また、10kW未満の発電設備については、出力制御対応機器の設置の有無により単価が異なり、3年ごとに価格が提示されるようになりました。これは、今後太陽光発電設備を導入しようと考える方が価格変動のスケジュールを把握できるよう、配慮された結果です。
単価はその後も見直されており、2020年現在は、2020年度は10kW以上50kW未満は13円(税抜)/kW、50kW以上250kW未満は12円(税抜)/kW、250kW以上から入札制度により決定することとなりました。
こういった変化から、「売る」よりも「消費する」ほうが得をするという認識が生まれ、自家消費型太陽光発電が注目を集めているのです。
九電ショックにより出力抑制のリスクが発生
もうひとつの背景が、先ほど挙げた「九電ショック」です。
九電ショックとは、2014年4月から電気の買取価格が下落することを受け、九州電力に系統接続の申し込みを行う方が急増した問題を指します。九州電力は、このとき申し込みされた太陽光発電設備のすべてを接続すると発電量が消費電力を上回ることから、電力の需給バランスが崩れることを危惧しました。そのため、既存・新規を含め系統接続の回答をすべて一時保留する事態となったのです。その後、北海道や四国、沖縄などでも保留の発表が相次ぎ、多くの事業者に“ショック”を与えました。FIT法改正時にはこの事件を踏まえて、出力抑制が設けられることとなったのです。
出力抑制とは、電気の需給バランスが崩れた際にとられる対応のことを指し、これにより需要を供給が上回った場合には売電できなくなる可能性もあります。こういったリスクに加え、買取価格の下落も進んでいることから自家消費型太陽光発電を検討する企業が増えつつあります。
自家消費型太陽光発電の国内導入事例
ここでは、自家消費型太陽光発電の国内事例を紹介します。
大規模な設置事例
積水化学工業は、2020年1月31日に、環境負荷低減を目的とした取り組みとして、国内の4工場に対して合計3.2MWの自家消費型太陽光発電を設置すると発表しました。この設置には5.6億円の資金が投じられ、発電出力は合計3,287kWとなり、4工場の年間使用電力量の約37%にあたる約3,100Mwh/年をカバーできることが見込まれています。
これは電気料金に換算すると4,300 万円/年が削減できる計算となり、温室効果ガス排出量に関しても約1,720t-CO2/年を削減できる見込みとなっています。
自家消費型太陽光発電まとめ
自家消費型太陽光発電は、発電した電気を自社施設で使用する設置形態です。
電力を自家消費することにより、電気料金の削減や、環境経営への参画による企業のイメージアップなどのメリットが期待できます。
また、災害などの増加によって注目を集めている企業のBCP対策にも、自家消費型太陽光発電を活用できる場合があります。
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