CO2削減目標を達成するために必要な努力とは?各業界の事例まとめ
近年では、エコカーや省エネ対応の家電など、さまざまなエコ製品が販売されています。
こういった製品が増えている背景には、
「産業革命以降の気温上昇を2度未満にする」という目標のために、
世界各国がCO2削減に励んでいるという事実があります。
これは日本のエネルギー政策にも大きく関わっており、
国や個人だけでなく企業に対してもCO2削減が求められているのです。
しかし、企業としては具体的にどういった取り組みをすればCO2削減を達成できるのでしょうか。
各業界の事例を参考にして考えてみましょう。
CO2削減を目指す「パリ協定」と日本の課題
そもそも、世界各国でCO2削減に励む背景として「パリ協定」があります。
パリ協定とは、2020年以降の地球温暖化の対策として、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)の開催地パリで採択された協定のことを指します。
具体的には、先進国・発展途上国を問わずすべての国が協力し、地球の気温上昇を抑えようとする、国際的な取り組みです。
パリ協定では、21世紀後半には、温室効果ガスを実質ゼロにすることが目標とされており、
加盟国は、5年ごとに削減目標を見直し、国連に報告することが義務付けられています。
取り組みが不十分であるとみなされた場合、罰則はないものの、
国際的なプレッシャーを受ける可能性があります。
2017年にアメリカがパリ協定からの離脱を宣言して
大きな話題になったことは、記憶に新しいかと思います。
地球環境よりも自国の成長を優先したトランプ大統領の行動は、
エネルギー産業や石油業界からの支持は得たものの、
アメリカは中国に次いでCO2排出量が多い国だったため、
目標達成を目指す世界にとっては大きな痛手となりました。
一方、日本はというと、2013年に、CO2排出量の削減目標を
「2020年度に、2005年度比で3.8%減」として提出しました。
ただこの数値は、先進国が排出削減を義務付けられた京都議定書の基準年(1990年)と比較した場合には
「京都議定書の基準年(1990年)比で3.1%増」だったのです。
目標が低いどころか、むしろ1990年からの増加を肯定している、と各国から批判を浴びたため、
2015年7月に再度「2030年度に、2013年度比で26%削減する」という削減目標を提出しました。
原則、一度提出した目標値は引き下げることができないため、
日本政府は、目標達成のために企業に対してCO2削減の努力を強く求めています。
(参考記事: 環境省「平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」を参考)
日本の課題と「エネルギーミックス」
なぜ2013年当初、日本が低い目標値を提示したかというと、東日本大震災により原発が稼働停止したため
火力発電に依存せざるを得ない状況だったという背景があったからです。
日本ではCO2排出量の約4割を発電所などのエネルギー転換部門が占めているため、
CO2削減目標の達成には発電方法のバランスを見直すことが重要ではありましたが、
いきなり発電方法をすべてCO2が発生しない方法に変えることは実際には難しいものです。
そこで注目されているのが「エネルギーミックス」です。
「エネルギーミックス」とは、火力や原子力、再生可能エネルギーなど、
発電のエネルギー源をバランスよく組み合わせて電源構成を最適化するというもの。
これにより、それぞれの長所・短所と、発電需給の実情を見ながら、
CO2削減と電気の安定供給を進められます。
たとえば火力発電は、燃料を海外からの輸入に頼る必要があるため発電コストが不安定という面があります。
原子力発電は、CO2を発生させないというメリットがある反面、
万が一の事故への不安から、震災以降はとくに稼働停止を求める声が強まっています。
再生可能エネルギーによる発電は、CO2を発生させないといったメリットもあり注目されていますが、
発電設備の設置導入コストがまだまだ高く、安定性についても保証しづらいものです。
このように、発電方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、
それぞれのエネルギー源をバランスよく構成していくことで、
CO2の削減と、安定的な電力供給を同時に進める、というのが日本政府の方針です。
特に、当時普及が伸び悩んでいた再生可能エネルギーに関しては、
より普及を促進するために、固定価格買取制度(FIT制度)が設けられました。
投資価値のある企業になるためにも、環境への配慮が重要
パリ協定によって、世界各国で環境に配慮する企業活動が行われていることから、
投資家のあいだでも「投資価値のある企業」の選び方に変化が生まれています。
それが「ESG投資」です。
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を
重要視して行う投資のことで、その配慮とは、環境保護活動や地球温暖化対策などを指します。
投資家のあいだではこうした環境配慮に積極的に取り組む企業が、
「投資価値のある企業」として注目され始めているのです。
ですから、CO2削減をはじめとする環境配慮は、
パリ協定の目標達成のためだけに取り組む問題ではなく、企業の価値向上につながってきます。
環境配慮を無視した経営を続けてしまえば、投資家たちの評価が得られず
「投資価値の薄い企業」とみられてしまうため、
長期的な観点で言えば、環境に配慮することが「企業の強み・価値」の向上となるのです。
どのような活動がCO2削減につながるのか
ここまで、国としてのCO2削減の方針の話を書きましたが、
では具体的にどのような企業活動が、CO2削減につながるのでしょうか?
その取り組みのひとつとして、植林を行っている企業があります。
植林はCO2削減に役立つだけでなく、減少している森の保全や、
その木の実をエサにする動物を守ることにもつながります。
他にも、再生可能エネルギーの使用や省エネ対策など、さまざまな方法が挙げられます。
各業界では具体的にどういった方法でCO2を削減しているのか、事例をご紹介します。
各業界の取り組み事例を紹介!
太陽光発電の導入
プリンターやミシンといった機械の製造・販売を行うブラザー販売株式会社を運営するブラザーグループでは、
工場に太陽光発電システムを導入することにより、CO2削減に努めています。
大規模な施設のため、100%再生可能エネルギーとするのは難しいですが、
工場の電力使用量のうち数%を自家発電で賄っています。
また、発電設備が設けられないエリアや施設では、
後述の「再生可能エネルギーにより発電された電気」を購入することで、CO2削減となるよう工夫しています。
(※ブラザーグループの取り組みは、当社の施工・サービスによるものではございません)
(参考サイト:ブラザーグループ「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」を策定)
再生可能エネルギー由来の電気の購入・利用
株式会社エコスタイルが行っているのが、政府の指針同様、再生可能エネルギーに注目した活動です。
エコスタイルでは、他の企業に向けて「クリーンな電気を提供する」というソリューションを提案しています。
太陽光発電設備を設けるには初期投資費用や維持費が必要ですが、それらの資金についてはエコスタイル提携の金融機関から融資を受けることができます。
そのかわり、電力購入の契約をした企業は、その発電設備から得た電気の料金を支払うことで、
「再生可能エネルギー由来の電気を使っている」とみなしてもらえるものです。
これは「PPAモデル(電力購入契約モデル)」と呼ばれ、近年注目されている導入方法です。
物流の見直しも重要
物流を見直すことも、CO2削減と大いに関係しています。
ブラザー販売株式会社は、環境負荷の少ない物流を目指し、
配送ルートや便数を随時見直し、物流の効率化を図っています。
こういった試みによるCO2削減効果は、出荷重量あたり38%となり、高い成果を上げています。
大口の顧客については、トラックを使わず鉄道で輸送することで、
2017年には約18トンものCO2削減を行っており、
物流を見直すだけでも大きく貢献できるのがわかります。
(参考記事: ブラザーグループ:「ブラザーグループの環境活動レポート」CO2排出削減活動 の広告を参考)
自然保護活動への参加
自然保護活動は、持続可能な社会のために重要な活動です。
先ほど挙げた植林に関しても、特に、建築業や製造業など
木を材料として利用する企業にとっては、大切な活動ではないでしょうか。
「積水化学グループ」は、こういった自然保護活動に力を入れており、
グループ社員が地域の森で植樹をするなど、地域ぐるみの取り組みを進めています。
自然豊かなエリアにある工場では、工場立地法の規定よりも大きな緑地を設けたり、
ビオトープを作ったりといった工夫もしています。
さらに、社員や地域の方を招いて自然学校を開き、環境保護の大切さを広めるなど、
地域全体でCO2削減に努められるような取り組みが行われています。
(参考記事:積水化学工業株式会社「地域の自然活動」より)
身近な取り組みからはじめてみよう!
CO2削減に向けた取り組みは、企業によってさまざまです。
自社が消費している材料に目を向けてみるのもひとつですし、
太陽光発電のような大規模設備を導入するという方法もあります。
「CO2削減なんて自社では難しい」と感じるかもしれませんが、
大規模設備が導入できる面積がなければ、再生可能エネルギーを購入するのもひとつの手ですし、
規模の大きな投資が難しい場合には、省エネ対策など身近なところからから始めることは可能です。
出来る範囲から取り組んでいくことで、環境に配慮しながら企業の価値も向上させていけるはずです。
※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。