省エネ法の対策に自家消費型太陽光発電?環境省の補助金も
省エネ法の取り組み方について、ご思案されている方もいらっしゃるかと思います。
このコラムでは、省エネ法に関する基礎的な知識や「改正省エネ法」の主なポイントを中心にご説明します。
改正省エネ法で取り組むべき具体的なアクションとして自家消費型太陽光発電の導入や環境省の補助金なども併せてご紹介します。
そもそも省エネ法とは?
省エネ法とは正式名称を「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」といい、工場や建築物、郵送、機械・器具について省エネ機器の導入や太陽光発電を設置するなどして省エネ化を進め、効率的に使用するための法律です。
省エネ法はオイルショックを契機として制定された法律で、施行されたのは昭和54年と今から40年以上も前に制定され、今なお施行されています。
省エネ法で発生する義務や罰則
省エネ法は、工場・事業場および運輸分野を対象とした規制が定められています。
省エネ法が課す義務のひとつに、エネルギー使用量の把握および「エネルギー使用状況届出書」の提出、があります。
また、工場・事業場のエネルギー使用量の総量が1,500kL以上の場合には、毎年度の5月末日までに「エネルギー使用状況届出書」を作成し、本社所在地を管轄している経済産業局への提出といった義務も課されます。
その他にも、一定の条件を満たし、「特定事業者」や「特定連鎖化事業者」として指定された事業者に関しては、
- 定期報告書・中長期計画書の提出
- エネルギー管理統括者・エネルギー管理企画推進者の選任
- エネルギー管理者またはエネルギー管理員の選任
などの義務も発生します。
これらの義務で定められた届出や報告を怠ったり、虚偽の届出をしたりした場合、「50万円以下の罰金」などが課せられるため注意が必要です。
改正省エネ法で気にすべきポイント
改正省エネ法とは?
省エネ法は、たびたび改正されているため、改正前の内容と比較して「改正省エネ法」と呼ばれたりもしています。
ですので、改正によって規則が追加されたり、変更されたりしていますので、いくつか重要なポイントをピックアップして解説しましょう。
省エネ法の改正で重要なポイントが、2009年の改正で「企業単位での規制」になったことです。
2009年の改正前は「親会社・子会社」それぞれのエネルギー使用量が規制対象だったのに対し、改正後は「グループ企業全体」のエネルギー使用量が規制対象になりました。(上図 右側)
(以下「エネルギー使用量」は、原油換算値(kL)のことを指します)
例として、工場・ビル・店舗などが全国に分散している企業で考えてみるとよく分かります。
- 事業場:1,000kL/年
- 事業場:600kL/年
- 営業所:200kL/年
- 営業所:100kL/年
たとえば上記の場合、改正前の省エネ法であれば、「工場・事業場単位」のエネルギー使用量が規制対象でしたので、どの施設も1,500kL/年を超えていないため規制対象にはなりませんでした。
ところが省エネ法の改正によって「企業全体で1,500kL/年を超える場合」が規制対象となったため、上記の例で挙げた企業は、合計で1,900kL/年となり、規制の対象となります。
さらに2018年の改正により、これまでは規制対象外だった「ネット通販を営む小売り事業者」も、省エネ法の規制対象に含まれました。
これは、荷主が貨物輸送事業者等と連携して、受け取り場所の多様化や宅配ボックスの活用など貨物輸送における効率化の積極的な取り組みを期待するものです。
また、この他にも、過去の改正において、
- 「電気需要平準化時間帯」の設定
- 「工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針」の策定
- 「電気需要平準化評価原単位」の策定
- 「定期報告書様式」の変更といったポイントがあります。
これらについてもご紹介していきます。
「電気需要平準化時間帯」の設定
電気の需要平準化は、省エネ法の2013年の改正で、以前よりさらに重要視されるようになりました。
2013年の改正省エネ法において、電気需要平準化の推進策として新たに重要視されたのが「時間」の概念です。
従来の省エネは、朝方や昼間、夜間でまんべんなく同じ程度の省エネを求めていましたが、季節や時間帯ごとで電気の使用量は異なるため、それに合わせて省エネを推進していったほうが合理的である、という考え方です。
そんな中、改正によって新たに設定されたのが「電気需要平準化時間帯」です。
「電気需要平準化時間帯」とは、電気の需要と供給にあわせて、「電気の需要の平準化」を推進する必要がある時間帯のことを指します。
具体的には、全国一律で7~9月(夏期)と、12~3月(冬期)の8~22時が該当します。
日本全体で、空調の使用量が増える時期・時間ですね。
また、この「電気の需要の平準化」とは、昼間の消費電力を夜間に移すピークシフトや、使いすぎを抑えるピークカットなどにより“日本全体の夏期および冬期の昼間の電気需要を低減させる”ことを指します。
「工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針」の策定
2013年の改正では、上記でご紹介してきた「電気需要平準化時間帯」を推進するために、
「工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針」という、事業社が取り組むべき措置に関する指針も定められました。
具体的には、
- 電気需要平準化時間帯(7~9月と12~3月の8~22時)において、
電気の使用から、燃料または熱の使用への転換をする(チェンジ) - 電気需要平準化時間帯(7~9月と12~3月の8~22時)に使用している
電化機器の使用時間帯を、電気需要平準化時間帯以外の時間帯へ変更する (シフト) - 「エネルギーの使用の合理化の徹底」や
「電気の使用量の計測管理の徹底」など、事業社が取り組むべき措置を行う(カット)
が挙げられます。
「電気需要平準化評価原単位」を策定
同じく2013年の改正で、新たに「電気需要平準化評価原単位」が設けられました。
「電気需要平準化評価原単位」とは、電気需要平準化時間帯(7~9月と12~3月の8~22時)の電気使用量を、実際の電気使用量を1.3倍にして算出するものです。
つまり、電気需要平準化時間帯内での削減を実現した場合はより良い評価となり、逆に電気需要平準化時間帯内の使用電力が増えた場合には評価が低くなります。
これにより、それぞれの事業者の評価を公平にすることを図っています。
その結果として、電気需要平準化時間帯の電気消費を抑える狙いがあります。
「定期報告書様式」の変更
こうした2013年の改正により、「定期報告書様式」も変更されました。
2020年度提出用の定期報告書作成支援ツールは、
経済産業省「資源エネルギー庁」のWEBサイトにて公開される予定です。
(参考:2020年度提出用はこちら)
適合を建築確認の要件とする建築物の対象の拡大
2019年5月には「建築物省エネ法の改正概要と今後のスケジュール等
について」が公布されました。
この交付によると現行では大規模(延べ面積2,000㎡以上)オフィスビルが規制対象ですが2021年5月までに中規模(延べ面積300㎡以上)のオフィスビルまで拡大される予定です。
改正省エネ法で取り組むべき具体的なアクション
このように、時代に合わせ、省エネ法の改正という形で、さまざまな規制や重点ポイントが定められ、日本全体で省エネを推進していこうとしています。
日本においては、工場などの企業活動によるエネルギー使用量が、全体の大部分を占めています。
そのため、企業が積極的に省エネ法を意識し、取り組んでいく必要があるのです。
それでは具体的に、企業が省エネ法にどのように取り組むべきかをご紹介していきます。
①自家消費型太陽光発電システム
自家消費型太陽光発電システムとは自社工場の屋根・屋上などに太陽光発電システムを設置して発電した電力をそのまま施設で消費する事で、電力会社から購入する電力量を抑える事ができる省エネ方法のひとつです。
自家消費型太陽光発電システムは電気料金の削減だけでなく、災害などの緊急事態が発生した際に企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るために日中のみ太陽光発電システムは電源として機能します。また太陽光発電の電力の自家消費により地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出量の削減に貢献し、CSR活動として内外にアピールが可能です。
節税面においても自家消費型太陽光発電なら中小企業等経営強化法に基づく税制優遇が利用可能となり、即時償却もしくは税額控除のいずれかが適用されます。
まとめ
省エネ法はたびたび改正が行われており、検索しても古い情報が出てきたり、最新の情報が分かりづらかったりすることも多いですが、しっかり押さえておきたいポイントは、これまで「工場・事業場単位」だったエネルギーの使用量が「企業単位」に変わったことです。
また、省エネを行う「時間帯」という概念が加わり、電気需要平準化時間帯(7~9月と12~3月の8~22時)にいかに省エネを行うかが重要視されるようになりました。
「省エネ法」の改正に対して企業がとるべきアクションとしては環境省の補助金を有効に活用して自家消費型太陽光発電システムを設置することなどが挙げられます。
とくに、自家消費型太陽光発電は環境施設として認められるため「省エネ法」にしっかり繋がる長期的な取り組みです。太陽光発電で発電した電気を使用することで「化石燃料由来の電力の購入を減らす」ことができ、省エネ法が推し進める「省エネ」を達成するだけでなく様々な税制も適用可能なため、多方面にメリットがある設備投資のひとつです。
時代にあわせて改正されていく「省エネ法」に対して、企業側もしっかりと対策を講じていきましょう。