エネルギー供給構造高度化法とは?非化石価値の調達方法
「エネルギー供給構造高度化法(以下、高度化法)」とは電気やガス、石油事業者などのエネルギー供給事業者に対して、再生可能エネルギーをはじめとした非化石エネルギーの利用や、化石エネルギーの有効活用を促進するための法律です。「対象となる事業者は?」「目標を達成するための方法は?」などの疑問をお持ちの方にむけて、この記事では下記内容について詳しく解説していきます。
- 高度化法の対象となる事業者条件と目標
- 目標を達成するための非化石価値の調達方法
- 目標達成にともなう課題と対策
高度化法が制定された背景
高度化法が制定された背景には、日本のエネルギー事情と深刻化する地球温暖化の問題が関係しています。
まず日本のエネルギー事情に関してですが、日本が消費しているエネルギーの8割以上が石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料であり、その化石燃料も海外からの輸入に頼っています。輸入対象国の情勢によっては化石燃料の市場価格が乱高下する可能性があり、エネルギーの安定供給ができないリスクを抱えています。
こうしたエネルギーの安定供給や地球温暖化対策といった課題を解決するために、化石エネルギーの使用を減らし、二酸化炭素を排出しない非化石エネルギーの利用を推進する「エネルギー供給構造高度化法」が制定されました。
- 参考記事:資源エネルギー庁「エネルギー供給構造の高度化について -バイオ燃料政策について-」
- 参考記事:資源エネルギー庁「エネルギー供給構造高度化法について」
高度化法の対象となる事業者と目標
ここからは、高度化法の対象となる事業者と、高度化法によって定められた非化石電源の比率目標をご紹介していきます。
年間販売電力量5億kWh以上の小売電気事業者が対象
高度化法は、すべてのエネルギー提供事業者に対するものではなく、定められた条件にあてはまる電気事業者・ガス事業者・石油事業者などが対象となります。
電気事業者の場合、前事業年度における電気の供給量から、当該年度における他の電気事業者に対する供給量を減じた量が「5億kWh時」(国内総供給量の0.05%)以上であることと定められています。
- 出典:資源エネルギー庁「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律の制定の背景及び概要」p10
「非化石電源比率を2030年度に44%以上にする」が目標
高度化法では、法律の対象となる電気事業者に対して、非化石電源比率の増加を求めています。非化石電源比率とは、全体の電源手段の中の、再生可能エネルギーなど非化石電源が占める割合を指します。ここで言う電源とは、発電する手段を指します。
高度化法では、「2030年度に非化石電源比率を44%以上にする」が目標として定められています。そのため対象となる事業者は、2030年度までに高効率な電源を調達し、非化石電源比率を引き上げる努力をしなくてはいけません。
目標未達成の場合、指導・勧告・命令・罰則が科される可能性も
もしも高度化法の対象事業者が、目標の「2030年度に非化石電源比率を44%以上」を達成できなかった場合、指導・勧告・命令・罰則が科される場合があります。罰則については、
- 勧告に従わない者は100万円以下の罰金
- 適切な計画を提出しない場合や、業務状況の報告を行わない、虚偽報告をする、検査を拒否・妨害・忌避した者は50万円以下の罰金
と、高度化法の第十九条および第二十条に定められています。
- 参考資料:資源エネルギー庁「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律関係条文集」p7
高度化法の目標を達成するための非化石価値の調達方法
高度化法の目標を達成するためには、非化石価値の調達が必要です。非化石価値とは、再生可能エネルギーなどの非化石電源によってつくられた「非化石電力」と、『二酸化炭素を排出しない』といった非化石電力に付随する「環境的な価値」を指します。
ここからは、非化石価値の調達方法についてご紹介します。
非化石価値取引市場で非化石証書を取引する
「非化石価値取引市場」で「非化石証書」を取引する方法があります。非化石価値取引市場とは、「非化石電源比率を2030年度に44%以上にする」の目標達成のため、小売電気事業者が環境的な価値(非化石価値)を調達できるよう設立された取引市場です。
非化石証書とは、非化石電源によってつくられた非化石電力から、環境的な価値だけを切り離した証書を指します。この非化石証書の購入分が、そのまま同等の非化石電源を所有しているとみなされます。たとえば、太陽光発電システムなどの非化石電源が無い電力会社が、供給電力量の50%に相当する非化石証書を購入したとすると、この電力会社の非化石電源比率は50%になり、目標基準をクリアできます。
このように、非化石証書を購入することで、非化石電源をもたない電気事業者でも、非化石電源比率の向上が見込めます。
自社で非化石電源を開発(新規設置)する
小売電気事業者が自社で太陽光発電システムや風力発電システムなどの非化石電源を用いて非化石電力を発電する方法が挙げられます。特に太陽光発電システムは需要の増加や技術的な進歩により、近年は導入コストが下がってきています。自社で非化石電源を新たに設置する場合は、太陽光発電システムの導入を軸に考えていくのが現実的でしょう。
非化石電源の新設におすすめ非FIT太陽光「PPS電源開発」
PPS(新電力)が自社で新しく非化石電源を開発するのであれば、非FIT太陽光「PPS電源開発」がおすすめです。非FIT太陽光発電システムを開発することで、CO2排出係数の低い電気を需要家に供給する事が可能になります。
なお、非FIT太陽光とは、FIT(固定価格買取制度)の対象ではない太陽光発電を指します。非化石価値取引市場においては、非FIT太陽光発電由来の非化石証書を「非FIT非化石証書」、FIT太陽光発電由来の非化石証書を「FIT非化石証書」と言います。
非FIT太陽光「PPS電源開発」により、高度化法への対応だけでなくRE100に対応した電力の販売ができます。RE100とは、企業が自社で使用する電力をすべて(100%)再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的イニシアティブのことで、主に環境経営を推進しようとしている国内外の企業が参加しています。
エコスタイルの非FIT太陽光「PPS電源開発」について詳しくは、以下のページをご覧ください。
https://eco-st.co.jp/wp/renewable-area-power/
高度化法の目標達成にともなう課題と対策
ここからは、高度化法の目標達成にともなう課題と対策について解説していきます。
【課題】非化石電源の確保にともなうコストの増加
非化石電源の比率を目標通り44%以上にできた場合、非化石価値取引市場で非化石証書の取引や、太陽光発電システムをはじめとした再生可能エネルギーの新規設置によって、高度化法の施行以前にくらべて電気の生産コストが高くなってしまう傾向にあります。
【対策】環境価値の高い電力として販売先を確保する
太陽光発電の新規開発による電気の生産コストが増加した分の対策として、非FIT非化石電源を使用して環境に配慮した方法でつくられている「追加性のある電気」であることをアピールして販売する必要があります。
たとえば、非FIT太陽光発電の設置により生産が可能となる「非FIT非化石電源」を「RE100」を目指す電力需要家に対し、「RE100メニュー」といった名前で通常の電気より付加価値をつけて販売する方法もあります。
追加性とは、既設の太陽光発電所ではなく、投資の伴う新規開発により再生可能エネルギーの拡大に寄与することを指します。グローバルな機関投資家は既設FIT電力から調達した非化石証書を使った再エネ電気ではなく、新規開発による再生可能エネルギー拡大への寄与を評価しており、追加性のある電気を使っていることが需要家にとって評価されるポイントになります。
エネルギー供給構造高度化法まとめ
エネルギー供給構造高度化法は、電気事業者をはじめとしたエネルギー供給事業者に対し、非化石エネルギーの利用や、化石エネルギーの有効活用を促進するための法律です。
高度化法では、年間販売電力量5億kWh以上の小売電気事業者に対し「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められており、目標が未達成の事業者は指導・勧告・命令・罰則が科される可能性があります。
高度化法の目標を達成するための非化石価値調達方法には「非化石価値取引市場で非化石証書を取引する」と「自社で非化石電源を新規設置する」の2種類があります。事業者ごとの資金規模でも選べる戦略は変わりますが、どちらの方法も選べる場合は、2つとも活用するなどして目標達成を目指すことが大切です。
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